ついこの前までは桜が咲き誇り大勢の人々で

ごった返した上野の杜も青葉茂れる初夏の風に

吹かれていると、つくずく散歩の季節が

やってきたと感じるものでございますよ。

散歩といったって、何も目的があるわけでは

ありませんでしょ、

ふらり、ぶらりとあても無く歩いているだけ、

目的を持つと仕事みたいになっちまいますから

この何も考えず、勿論見返りも期待しないという

精神状況に身を置くことこそ

 散歩の効用なるべし ですな。

それでも冬は寒いし、夏は暑くて汗ばかり 

というのもこれはこれで難行苦行の修行みたいな

気になってしまうので、ちょうど今頃の風に吹かれて

漂うような気分がえもいわれぬ散歩の効用なんでございますよ、

そりゃ目をつぶって歩いているわけではございませんから、

新緑の若葉が色を増してくれば、

それなりに感じることはありますし、今でなければ

出会えぬ花の香りについ足を止めることもございますよ、

お寺さんや神社の門前に張られた張り紙に、人生訓を読み取ったり、

時には祭りの日時が書いてあったりと、情報収集のいい方法にも

なったりして、それなりに楽しみが見つけられるのも散歩の効用

なのでございます。

初夏といえば、いよいよ東京下町は夏祭りの季節到来、

先日は上野の東地区をお守りいただいている下谷神社の大祭で

盛り上がったばかり、下谷が皮切りなら、これからは毎週どこかで

夏祭りが始まるのでありますよ。

下谷に続いて神田祭り、その次は地元浅草三社祭、下谷の小野照崎神社、

「そうだ、今週は五条天神社の大祭ですよ」

とやって来たのは上野忍ヶ岡に鎮座する五条天神社、

なにしろこちらの神様は鎮座1900年という気の遠くなる昔から

上野を守っていただいておりますので、感謝を込めてお参りを、

忍ヶ岡の主と崇められる穴稲荷様へも

参拝、寛永寺が出来る時忍岡に居た狐が居所がなくなるというので

一洞を造り社を祀ったという謂れを持つ弥佐衛門狐にも手を合わせますよ。

散歩というのはただ歩くだけじゃありませんで、あっちでひっかかり、

こっちで寄り道が楽しいのでございます。

さてと三年に一度の大祭の日は千貫神輿の異名をとる宮神輿の

渡御があるのですよ、

こちらの氏子町内は、かつての黒門町、今や一大歓楽街に

なっている上野界隈をあの大神輿が練り歩く様をこの眼で

しっかり見ておかなければ夜も日も明けぬということで、

さっそく耳をそばだて、眼を凝らして

大神輿を探すのでございます。

なにしろ、お祭りじゃなくても大勢の人でにぎあう上野ですよ、

あちこち歩き廻ってやっとお眼にかかることができました。

上野囃子保存会のみなさんの軽快なお囃子にのって大神輿が揺れている

様子はエモイワレヌ光景でございますな。

通りを挟んで向こう側は湯島天満宮の御祭礼、

「オイッサ! オイッサ!」

祭り好きにはあっちの路地、こっちの路地を行ったり来たりと

楽しい祭り日和でございます。

祭りで火照った身体を冷やすのは・・・

下戸でスイマセンですな。