例大祭はその祭りを行う神社のなかで

一番大切な祭祀のなのです、

富岡八幡宮の例大祭は、

江戸の町を代表する日枝神社の「山王祭」と

神田明神の「神田祭」と共に江戸三大祭りとして

江戸の昔から大勢の人の集まる祭りの代表

だったのですよ。

三年に一度、八幡宮の御祭神を遷した御鳳輦が

氏子七十余か町を渡御される祭祀を 本祭 として

盛大に行われるのです。

時に御発輦した御一行は夕方の御着輦までに

氏子七十余か町を隈なく回わるとその距離は

ゆうに50kmを越えるというのですから

この暑さの中神様も大変でございます。

特に今年は富岡長子宮司が御発輦と御着輦の際に

昭和27年以来約六十年ぶりに網代車で供奉されるというので、

これを見逃しては二度と機会はないと

祭り狂いの爺は右往左往するのでございます。

綿密に予定を立てて行動することが最も苦手な性格は、

今更直しようも無くあっちのオヤジさん、

こっちの老人と聴き歩いて、必ず見られるポイントを

探すのも結構楽しいものですよ、

何しろ70余町会もあるのですから、必ず空いた場所があるはずと

辿り着いたのは深川北二町会、みなさんと祭り話に華を咲かせていると、

「そろそろお見えになられるぞ」

とお触れが回る。

一同整列してお迎えする、

しかし、神様もお忙しいのでして、近頃はエンジン附きの車の上に

御鎮座され、

頭を下げているうちにあっという間に行き過ぎてしまわれましてね、

「手を合わせる暇もなかったな」

「いや、来ていただいただけでありがたいと思わないとバチがあたるぞ」

などと賑やかなことでございます。

それでもみなさん笑顔になれたのですから、これこそ神様のご加護で

ございます。

「そうか、此処は御鳳輦渡御の途中でした、網代車を見られない」

と慌てて神社へ戻ります。

「間もなく御着輦でございます」

先触れのアナウンスが流れると、沿道に人が集まります、

来ました、来ましたよ、

昔は牛に引かれていたという網代車が、白丁の皆さんに引かれて

静々とやって来ます、

勿論、内には富岡八幡宮 富岡長子宮司の平安絵巻を思わせる

美しい姿が目を曳きます、

神官に守られた御鳳輦に思わず手を合わせます、

途中十二箇所で「富岡の舞」を舞った四人の巫女、

各町会の総代の晴れ姿が後に続きます。

暑い中、一日かかりの御鳳輦渡御お疲れさまでした、

実はこの御鳳輦渡御に対するお礼として、

明日は各町内神輿連合渡御が行われるのだ

と長老が教えてくださった。

深川のまつりは明らかに祭祀であり、

祈りの場であることを再確認いたしました、

「東日本大震災復興祈願」と銘打った意味が

改めてこころに染みた神幸際を目の当たりにして、

まつりを行う意義を改めて思うまつり旅の途中でございます。

明日の「神輿連合渡御」がますます楽しみなりました。

(この記事は東日本大震災のため神幸祭を一年延ばした2012年8月に
 記したものです。)