二百十日01

本日は立春から数えて二百十日、

もう気分はすっかり秋模様に切り替わっておりましたのに

何を今更 夏が戻ってくるんだ! などと悪態をつきながら

いつもの夕暮れ散歩に出かけてみれば、その悪態を仁王様が

お聞きになっていたのでしょうか、

見るもの、聞くもの、触るもの 目の前の全てに薄い膜が

かかっているようで、歩いていても何だか雲の上を所在なげに

ふわりふわり、

Exif_JPEG_PICTURE

こりゃっちょっとおかしいぞ 

と 鈍感なアタシでも気づきましてね、

いつもの店に飛び込んでいきなりの休憩、女将さんが

「そんな大汗かいてどんだけ仕事してきたのよ」

「いや、散歩を始めて三歩 歩いただけだよ」

「あんたそりゃ熱中症じゃないの」

そういえば大汗かいてるのに喉が渇かないからそのまま

歩いていたんですね。

水分補給しないと命とられるよ とばかり 

店の一番大きなジョッキになみなみと注がれた麦茶を

目を白黒させながら飲み干すのでありました。

二百十日03

そういえばやけに身体がだるいと思ったっけ。

「いい加減 歳を考えなさいよ、急の点く事は控えんのよ」

とお袋のような小言

「お陰で行き倒れにならずに済んだよ」

とその店を後に、本日は散歩中止と思いきや

あの休憩が強靭な?精神力を復活させましてね

まあ、それほど大袈裟なことじゃありませんが、

ふらりふらりの浅草散歩でございます。

二百十日04

観音様に手を合わせて旅の無事をお願いいたしまして

ふと見上げれば、天井の天女様の顔が小言の女将さんの顔に

見えるのでありましてね。

そうか、観音様は変幻自在に姿を変えて現れると聞いたことが

ありましたが、あれは本当のことだったんだと、更にお賽銭を

奮発いたしましてお礼を申し上げておりますと、

肩の後ろの方から

「そんなにお賽銭奮発するなら、アタシの店にも置いていきなさいよ」

とあの女将さんの声が・・・

帰りにお土産でも届けるかな。

二百十日05

この暑さの中で、炭火の前で煎餅を焼いている姿を

アタシは脅威の目で眺めておりましてね。

「ねえ、暑くないのかい?」

「旦那、心意気ですよ」

アタシはその煎餅を包んでもらいましてね、

一巡りして再び行きつけの女将さんの店へ

二百十日06

「はいよ、お土産」

「あら、気が利くのね」

「女将さんの丈夫な歯なら大丈夫だろう

と一番の固焼きにしといたよ」

「フフーン! その憎まれ口が出るようになれば

もう大丈夫だということよ」

本日の散歩はほんの少しで、

後は女将さんの店に居ついたままの

日が暮れる浅草散歩でございます。

二百十日07