鎌倉01

祭りに明け暮れているうちに気がつけばもう秋の真っ只中、

人間の感覚とは面白いもので、つい先日までは、

「この暑さ、いつまで続くのさ」

なんてぶつぶつ呟きながら歩いていたんですよ、

そうあの冷たい雨が一日中降り続いていたおかげで、

身もこころもすっかり秋を受け入れてしまったようで、

雨上がりの青空を見上げながら

「おお、秋空だよ」

鎌倉02

相変わらずの鎌倉です、

観光地という名の街は必ず表向きの顔と、素顔の顔をきちんと

使い分けるんです、

相変わらず表の顔の小町通りは平日といえども、押すな押すなの

大盛況でございます。

鎌倉贔屓の旅のおじさんは、自分のことのように喜びながら、

足は素顔の路地へと向かうのでございます。

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極端に人の姿の少なくなった御成り通りです、

こちらは、この街に住む人々の日常を支える通りでしてね、

目立たせる必要がないだけ、街並みが落ち着いているのです、

路地の奥に密やかにある珈琲店では散歩の途中なのか老人が本を

読んでいる、

店のウインドウの中は、いつ通っても昔がそのまま息づいている、

うっすらと覆った埃にさえも、懐かしさが湧き上がるのです。

鎌倉04

こんな路地の奥で商売になるのかなんて思っていた小鳥屋さんも、

金魚屋さんも、ちゃんと今でも店を開けている。

観光客に媚を売らないだけ、平常心が保たれているのだろうか、

商売とは、欲しい人が欲しい時に買えることができれば、

店の場所などそんなに選ぶ必要はないのかもしれない。

欲しいと思う人だけが知ってくれていたら、その店は細々でも

続けていける、素顔の街にはそんな店がまるで心の灯火のように

ポッ、ポッと灯りを点しているのですよ。

鎌倉03

もし、もっと売り上げを伸ばしたいとか、

もっと豊な生活をしたいと思うと、

必ず無理を承知で拡大路線へ舵を取り始める

のでしょう、

慣れないやり方は店主へストレスという爆弾を

抱かせてしまう、

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「あれ、オヤジさんの姿が見えないけど」

「入院したのよ」

やっぱり無理してたのですね、

この路地には、お金は使わないけれど、知恵を使う店主が

大勢いるのでしてね、

手書きの貼り紙に、その店主の人生観がにじみ出ている、

生きてるってなんていいんだろう 

て感じることができるのですよ。

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そういう街を探しているのがアタシの旅なのかも

しれませんがね。

「ゴットン、ゴットン」

おもちゃのような電車が通り過ぎていく、

踏み切りでその電車を見送りながらもう一度空を見上げた。

「やっぱり秋ですよ」

鎌倉にて