月見01

随分日暮れが早くなりましたね。

三々五々漫ろ歩いていた人たちが夕暮れとともに

三々五々集まり始めてきたようです。

いつもなら夕方5時に閉演になる百花園も

本日だけは解放されているのです。

月見04

親しきお仲間との団欒を楽しんでいても、

空が気になって、どうやら気も漫ろな風情です。

「ちょっと雲が多いですね」

「天気予報じゃ間違いなく

  見られるって言ってたんですけどね」

月見02

そうこうしているうちに、絵行灯に灯が点されていく、

蝋燭の光に照らされた言の葉が浮かび上がった。

 行灯の 月の句めぐり 百花園    八重子

 頬杖を すれば秋思の 果てもなし  梅扇

 役解かる 関守石や 今日の月    俊子

ひとつひとつ、頷きながら句を読んでいると、

「上がりましたよ!」

月見03

誰かの声に、座していた人も一斉に立ち上がり

東の空を眺めた。

雲を掻き分けるように顔を出した中秋の太陰は

息も切らせぬ早業で中空に浮かびあがるのでした。

dc0926110

 去年見てし 秋の月夜は照らせれど

  相見し妹は、いや年離る  :柿本人麻呂

一人でぽつんと月を眺めていた老人のあまりにも

寂しげな後姿に声をおかけした。

「昨年は一緒にこの月を眺めましたのに、

  まさか今年は一人で見ることになるとは・・・」

そして一筋の涙を流された。

月見06

「きっと一緒に見ていますよ」

とそれだけしか言葉になりませんでね。

いつしか琴の音が夫々の人のこころに

静かに沁みてきたお月見の宵でございます。

向島 百花園にて