(五條天神社 当日祭は静粛のうちに行われるのです)

近頃の祭りは土日に集中するためか、平日の祭り日は

まるで静かなものですよ。

五月二十五日は五條天神社の祭日、きちんと当日祭が

行われておりましてね。

午前中に式中巫女舞奉納の神事が行われていたのですが、

遅ればせながらやってきた時は奉納里神楽が始まって

おりました。

神輿が出るのは土日ですので境内は祭りとは思えぬほど

静かなものですよ。

(吉村社中による奉納里神楽)

(『保比之上使言付』)

『保比之上使言付』の途中からでしたので登場していたのは

高木神から豊葦原中津国を献上させるための交渉を命じられた

天若日子の舞う姿でした、この言付には天保比神に矛を、

天若日子には弓矢を授けるのですが、手にしているのは弓矢

ですので天若日子の舞いと想像するのでした。

当日祭には恒例の江戸里神楽の奉納が行われるのです。

吉村社中による演目は

 『天孫降臨』

 『保比之上使言付』

 『保比之上使』

 『天之返矢』

 『神明種蒔』

 『山神之舞』

長い休憩のあと始まったのは 『保比之上使』

つい先日、下谷神社例大祭で若山胤雄社中による

「天菩比之神使」観てきたばかりですので、筋書きは判って

おりましたが、吉村社中さんがどのように演じてくださるのか

興味深々で見つめておりました。

アマテラスオオミノカミの使いで大国主命の館にやってきた

天之菩比命を長旅の疲れもあるでしょうからと奥で休んでもらっている間に

大国主命から相談を受けた建御名方神が従者を連れて舞台に登場します。

どうやら従者は二人、どのように振る舞うのか・・・

従者(もどき)が建御名方神に話しかける際に必ず手を叩く仕草が

あるのですが、あたし等がお参りで二拍手をするのは、神様にこちらを

気づいていただく仕草なのだと合点がゆくのですな。

いよいよ天之菩比命が登場してきます、

筋書きが判って観ているせいか、何となく優男に見えてしまいますよ、

建御名方神は、天菩比命に

「中つ国はお返ししますからご安心ください」

と安心させお酒を飲ませて油断させるくだりは、どうも江戸っ子には

卑怯なやり方に想えてしまうあたりが里神楽の面白さなのかも

しれませんですな。

すっかり酩酊してしまった天之菩比命に、庶民の酒による失敗の数々を

思い出させるのでございますよ、

建御名方神と従者によって散々に打ちのめされた天之菩比命は

すごすごと去っていく後姿に哀愁が漂うのでありますが、一方、首尾よく

謀を果たした建御名方神が歌舞伎役者の六法を踏むような仕草で舞台を

降りていく姿が憎々しいのでありますよ。

最後は従者(もどき)による笑いを誘うおどけた仕草がホッとさせて

くれるのがこれぞ江戸里神楽でございますよ。

(見得を切って舞台を下がる建御名方神)

神楽を演じる舞台を最初に清め祓う演目が三番叟なら、

最後に舞台を清め祓うのが、「山神之舞」なのでしょう、

舞方の面は天狗(猿田彦)の面を用いており、

鈴と幣束を手に舞います。

最後は、その鈴と幣束を持って退場していきます。

どうやら舞台祓いと道具祓いの舞のようですね。

(「山神之舞」)

最後まで見守っていたのはほんの数人でしたが

日本人より外国人が感嘆の声をあげておりました、

セリフのない無言劇なので、かえって所作や舞い方で

感情移入がしやすかったのかもしれませんね、

それから若い人が最後まで見つめていたことは嬉しかった

ですね、能、歌舞伎、そして里神楽、日本の文化なのですからね。