北の国からいつになく早い雪の便り、

暦の上では確かに冬かも知れないが、

何時も歩く小道も

見上げる空の色も

ほら、頬を撫ぜていく風だって

まだ 秋だよ といいながら通りすぎていったじゃないか。

昨日のA氏のことが頭から離れない、

歩いている先に冬を探し始めていたのだろうか、

誰も居ないと想っていた蓮田の辺で、其処だけが色を失い

まるで真冬の様相で訴えかけてくる、

いや、無意識のうちに華やかな色を避けていたのだろうか、

「どうしてこんなに暗いいろばかりご覧になるの」

急に声を掛けられて振り向くと

白髪の婦人が微笑んでいた。

「何故でしょうか、

  もしかしたら心が病んでいるのかも・・・」

「自然には喜怒哀楽なんてないでしょ、

  人の心だけが自然の中から 嬉しさや、

    寂しさや、哀しみを感じるのよ、」

「今朝空を見上げたら、素晴らしい陽射しに

  ついふらりとやってきたのですが

  さっきから気が付くと、色のない処ばかり

  彷徨っていたみたいで、明るい希望に心が

   向かわないのかもしれませんね」

「いけないわ、そんな時こそ、

   無理やりでも明るい光を見つめなければ」

「ついていらっしゃい」

 という言葉が魔法のように心を捉えていたのは

彼女の白髪のせいだったかもしれない、

蝋梅が黄葉し、真っ赤に熟れたハナミズキの実を見ながら

小路を三度ほど曲がり、正面に大きなケヤキの彩を見つけると

「あなた、こんなに美しく舞う葉に気づかなかったの」

「ええ、蓮の葉の枯れ折れる景色ばかり気になっていて・・・」

「ほら、其処よ」

「これ、薔薇じゃないですか」

「そう 冬の薔薇よ」

「なんだか、切な気に見えてしまいますね」

「それは、きっと、

あなたの心がそう決め付けているだけですわ」

「冬のバラを見つけた人はね

 真実の愛の約束が得られるのよ」

その人は微笑を浮かべると

そう呟いた。

急にその薔薇が輝き始めた、

「ねえ、あなた、何か魔法でもかけたんですか

 さっきも此の前を通ったのにこの薔薇に気づかなかったもの」

振り向いてみたが彼女の姿は何処にもなかった、

「冬の薔薇か・・・」

もしかしたら、希望 の兆しかもしれない、

今度、A氏にお目にかかったら、此の話をしてみようかな。