菅原道真公を祀る神社は全国に一万二千ほどあるらしい。

アタシは道真公に興味津々で東京に居ても、

湯島天満宮・亀戸天神社・五條天神社などの御祭礼には

必ず駆けつけておりましてね。

東京以外でも関東各地には道真公に縁のある地が沢山ありまして

旅の目的地に選ぶことが多いのです。

その菅原道真公を御祭神とする天満宮は随分訪ね歩きましたが

肝心の太宰府天満宮だけがまだ残っていたんです。

昨年十月に待望の太宰府天満宮を参拝して、東京に戻ってくると

菅原道真公が気になって仕方がないのです。

道真公は京都や九州太宰府だけが縁ある地ではありませんで、

坂東、中でも常陸の国には、道真公の墓所まであるというので

今年は、道真公を追って、常陸大生郷、真壁あたりを訪ね歩いて

おりました。

25日は道真公の生まれた日であり、亡くなられた日でもあるのでして

ここ亀戸天神社でも毎月25日には数々の神事が行われておりましてね。

1月25日は初天神で鷽替え神事が、

2月25日は道真公の亡くなった日にあたり、神前に「なたね」を奉納する

  菜種御供(なたねごく)が行われ、梅の香りとともに春を迎える祈願

  が、

そして

3月25日の宵は「神忌祭」が行われるのです。

この日は旧暦の2月25日、道真公の命日にあたるため、

神官、氏子代表、近隣の子供たちが松明を手に、清められた境内を

照らしながら、道真公の御霊を守るように境内巡行が行われるのです。

道真公の御霊は、神輿ではなく純白の絹垣(きぬがき)に囲まれたまま

神官のてによって、境内を巡るのです。

薄闇の中、松明の灯りに照らし出された 絹垣 はなんと厳かなモノで

しょうか。

アタシ等子供のころは、神様を直に見ると目が潰れる なんて教えられて

育ってきましたので、頭を下げたまま恐る恐る垣間見るのでございます。

祭り好きのアタシは、各地の火祭りを何度か眼にしてまいりました、

    勇壮な 富士吉田の火祭り

    福島県須賀川の松明あかし

長野野沢温泉の道祖神祭り

    まだ歴史は新しいですが さきたま火祭り

    そして各地で行われる左義長(どんと焼き)

など、火が重要な役目を持つ祭りが今も各地に伝えられております。

特に御社での神事はほとんど夜に行われておりましてね、

電灯など無かった昔は、火は灯りであり、また不浄のモノを

焼き尽くす役目を持っていたのです。

さて 神忌祭に眼を移しましょう、

明らかにこの行列は葬送の形を現しているようです、

神々や死者などへささげるためのたいまつの使用は日本に限らず

世界各地のあらゆる民族に共通して見られる現象のようですね。

『春の夜の闇はあやなし梅の花

   色こそ見えね香やはかくるる』  凡河内躬恒

闇夜を麗しくするのは梅の香りと恋の世界では昔から

定番だったようですが、闇に浮かぶ松明の火は、ことのほか

心を怪しく燃やすものでありますな。

亀戸天神社 「神忌祭」にて