「もう戦後ではない」といわれた昭和30年代、

大人も青年も子供までがみんな上を向いていた、

豊かに成れるなら、どんなことでもいとわない

そんな日本人があっちからもこっちからも集まって

この東京という街を造りだしていった。

繁栄の邪魔になるものは全て破壊し、ブルトーザーが唸り

クレーンが高みへと街を釣り上げていった。

失うことなど恐れない精神は、

世界に類のない繁栄の街を造り上げた

と信じたはずだった昭和という時代、

豊かになったと信じた昭和という時代、

でも失くしていたのです、それは

本当に大切なモノを・・・

それは他人に向けられていた愛、

自分以外に大切な人がいたと信じられたこころ、

黙っていても気づいてあげられる優しさ、

(10年前の東京)

昭和を生き抜いた私たちは一体、

次の日本を背負う若者に何を残せたのでしょうか

今、はっきりと見えてきたものは

食べ過ぎて身体を弄ぶ肥満人種、

使い捨てることが当たり前の経済活動、

積み重なるゴミの山、

(親しみを感じたこの店はもうありません)

ひとつだけ胸を張れることがあります。

それは経済だけでは豊かになれないことを世界に

証明してみせたこと。

舵取りの船長を失った日本丸は漂白の旅人

なるようになるさと高を括っていけるほどの強さもない

我慢することなど繁栄の代償に捨ててしまった日本人に

何が残されているのでしょうか、

(嗚呼、このビルも消えました)

50年前、モノが無いことが当たり前だった、

利用できるものは再利用することが当たり前だった、

でも誰も、夢までは失くしていなかったよね、

もう一度、あの頃に戻れますか・・・

モノも食料も、そしてお金もない時代に。

多分、覚悟というのはこういう時代にこそしなければならないのでは・・・

また新しいビルが出来上がりました、

その向こうの空を見つめながらふと立ち止まった

散歩の途中のこと・・・