昨日の天気予報はピッタリ当たりましたな、

あの土砂降りの中銀座をほっつき歩いていたのに

風邪もひかずに無事一日が過ぎていきましたよ。

打って変わって今日はいい天気じゃないですか、

いや曇り空ですからいい天気じゃないないはずなのに

あの冷たい雨よりはずーっといい天気です。

昨夜の雨の中歩いたという事実の前では何もかも

よく感じるものですよ

相変わらず雨だろうと、曇りだろうと、本日も歩き出して

おりますよ。

「雨より、この空っ風のほうをなんとかしてくれまいか」

ぶつぶつと呟きながらいつもの散歩でございます。

下町にはね網の目のような路地が縦横にありましてね、

大通りを傍若無人に吹き荒れる空っ風もその路地の奥にまでは

入ってこないのですよ、

そうなんです、下町の路地裏は恰好な風よけの場所なんですよ、

ひょいと路地を曲がっただけなのに、吹き晒しの中を歩いて

きた者にはまるで砂漠で逢ったオアシスみたいなものですよ。

目の前のガラス扉が開くと、普段着のオバさんが何の警戒感も

持たずに路地の小路に姿を現す。

他人の目を気にしなくていいとその後ろ姿が語っている。

そうか、路地は冬の空っ風を遮るだけでなく、他人(ひと)の

目も気にしなくて済む道でもあるのですね。

ただ歩いているだけの路地裏、ひょいと曲がると目に前には

昭和がそのまま現れる、別に昭和を大事にとっておいたわけでは

ありませんよ、毎日の暮らしが続いているだけなのに、時代の

ほうが勝手にどんどん進んで今じゃ時代がひとつ古くなって

しまっただけなんですね。

そうか、昭和ってもう28年も前に終わっていたんですね、

どうりでアタシも歳とるわけですよ、昭和を43年、平成を28年

生きたわけですからね。

この路地を歩いているとね、どんどん遠くなる昭和へ行きつける

気がするんです、昨日過ぎて行った刻はもしかしたらこういう

路地の奥に吹き溜っているのじゃないか と 目をこらす。

 このまま歩き続けていたら一足早く暖かな春に出会える

かもしれない・・・。

そう思いながらもうひとつ路地を曲がった、

「ほらね、もう春ですよ」

満開の梅の花が目の前で微笑んでいる。

ここは昭和の春だろうか・・・