旅好きのアタシは移動手段としてはそのほとんどを自動車に

よって成り立っていたのです。

車なら自分で運転して誰の束縛も受けずに自由気ままに旅が

出来る一番の手段だと思って実行してまいりました。

北海道だろうが九州だろうが何の苦も無くハンドルを握って

何十年も旅を続けていたのです。

最近、自分で行き先を決めて、自分で運転していくことが本当に

自由なのか考えるようになってしまいましてね、

このところお祭りを訪ねることが多く、駐車の問題もあって

列車を利用することが増えましてね。

都会の生活では電車というのは目的があって利用するのが

当たり前で居眠りする暇も無く人々が乗り降りを繰り返し

ているので旅をしている気分など微塵も感じなかったのに、

地方へ向かう列車というのは実にのんびりできる空間であると

気付きましてね。

今は目的地までの切符を買わなくても旅が出来るように

なりましたでしょ、

とりあえず目の前にやってきた列車に乗り込むのです、

行き先は何にも決めておりません、

窓から差し込む日差しにいつの間にかまぶたが閉じてしまいます、

自分で運転していたら絶対に不可能なことですよね、

やがてお尻が痛くなりだすと、ぷいっと列車を降りてみるのです、

東京を出るときは明るかった見知らぬ町の空は、もう秋の夕暮れが

覆い初めているでしょう。

「眼が覚めたら其処が旅先」

というやり方はいかがですか、

何の情報も無いまま町を歩き出す、実に新鮮で、刺激的ですね、

都会にいると情報(ほとんどが余計なモノ)が溢れかえっていて、

気の休まる暇もないのです。

あぁ、そうそう一つだけ注意しなければならないことがありましてね、

見知らぬ町で好奇心に駆られてウロウロしていると不審者に間違われる

ということ、

アタシは大抵は空を見上げているのです。

東京じゃ見たことも無い美しい空がいっぱいに広がっているのですからね、

お腹が空けば、この国なら何処だって食にありつけますよ、

まあ、大抵はカツ丼になるのですけどね、

そして一番に探すのが祭りのポスターですよ、

「そうか、来月は祭りがあるのか」

こうしてまたひとつ訪ねたい祭りが増えるというわけですよ、

えっ、そんな情報はWBですぐにわかるっておっしゃるんですか、

WBの情報は視覚だけで、その町の匂いも温度も肌で感じられますか、

じかに訪ねた中で、沢山の情報を持ち帰ることが出来れば、

選択の幅が増えるわけで、その見知らぬ町で出会った人の訛りや

優しさに触れてごらんなさい、絶対にもう一度訪ねたくなりますからね、

ふらふらと無目的な旅というのは実は一番効率がいいのですよ、

旅のやり方とは千差万別、ひとつとして同じことはないはずなんですがね、

あの、みんなと一緒じゃないと安心できない方には、

あまりお勧めはしませんがね。

さて、そろそろ帰るとしますか、

勿論、特急列車はパス、各駅止まりでのんびり帰りましょう、

平日の列車の中はのんびり読書には最適ですよ・・・