週末になると祭りが目白押し、せっかくの祭りですから

からっと晴れて欲しいじゃないですかね、

神様をお訪ねする度に

「どうぞいいお天気にしてくださいまし」

などと殊勝な顔でお願いするのでございます、が

祭りが終わってしまうと、

「水無月だというのにちっとも降らないね」

などと天に向かってモゴモゴと文句を言ったりしておりますよ、

バチあたりでございます。

祭りのない平日は、花を見るというのが楽しみなわけで、

水無月の花といえば、紫陽花に花菖蒲じゃありませんか、

これがまた雨の日に咲いていると、えらく美しいのでありましてね、

今度は

「雨降らないかな」

人間なんていうヤツは勝手なものでございます、

へっ、そりゃお前さんだけだろう

はい、その通りでございます。

待ちに待っていた雨ですよ、

それっ ってんでいつもなら鎌倉辺りまで飛んでいくのですが、

どうも、祭日にお祭り行脚をしているので、平日くらいは

静かに過ごしたいというまたまた我侭な要求が耳の後ろあたりで

ささやくのですよ。

紫陽花に、雨に、鎌倉 とくればもう花より人込みを見る羽目に

なるのはもう何度も体験済みですからね、

ならば、家で静かに本でも読んでいるのが当たり前だろう

それが、そういかないのが旅人の旅人たる所以でございましてね。

旅を日常にしてみる なんていうことを始めたのは

ほら、まぐろが泳ぎ続けていて、泳ぎを止めると

死んじまうじゃないですか、

あれと同じなんですよ、毎日、ふらふらと回遊していないと

身体が弱ってくるんです、

ですから、雨だからといって歩かないということは出来ないのですよ。

と自分に言い聞かせて久しぶりの雨のなか、やってまいりましたのは

知る人ぞ知る 白山神社でございます。

丁度紫陽花が見頃を迎えた雨の日ですよ、

情緒たっぷりの参道の裏から細長い階段を上がれば、ほら紫陽花が

御出迎いしてくれますよ。

天暦年間(947-57)加賀一宮白山比咩神社を

武蔵国豊島郡元国木(現小石川)に奉勧請されたという

なかなかに由緒ある神社でして、ご祭神は

「白山比咩大神(=菊理媛尊)」

こちらの姫神様は何をなされたかと申しますとね、

神話の伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)が

黄泉の国との境界で対峙するふたりの前に登場するのが菊理媛尊で、

伊弉諾尊・伊弉冉尊二神の仲裁をしたとされているのですね、

そのために、現在は「和合の神」、「縁結びの神」として尊敬を

受けているのです。

紫陽花に彩られた参道を行くと、先客あり、

若いカップルに、女学生がなにやらお祈りの真っ最中でございます、

いつの世でも、男女の仲はうまくいかなかったり、

壊れやすかったりするもの、

せめて切ない気持ちを姫神様にお願いするくらいの望みは

残しておいて欲しいものですよ。

へい、アタシ等みたいな爺には

「お前さん、まだそんなことを考えておるのか」

と、姫神様からきっと相手にされませんでしょうね、

いいんですよ、爺たちの諦めた想いを、若い人たちにお与えくださいましよ。

この美しいく雨に濡れた紫陽花を眺められただけで本望でございます。

戻り路で観音様に手を合わせる

 『無常』

 「しばらく無常にかけて

 世のはかなく

 人のいのちの

 あやうきことを

 わすれざるべし」

住職の書き上げた言葉にしばし立ち止まる。

雨の日には雨の中を歩く旅の途中のこと・・・