沖縄では、旧盆になると現世に戻ってくる祖先の霊を

送り迎えするため、

若者達が歌と囃子に合わせ、その地域の道を練り歩く習慣がある

と沖縄生まれのKEITH君が説明してくれましてね。

「エイサーって云うです」

それ以来、旧盆にそのエイサーを見てみたいと想っておりましたが、

深川富岡八幡宮の例大祭で見ることができましてね。

その富岡八幡宮祭礼は丁度旧盆に行われるのです、

早速、駆けつけたというわけでして、こちらの祭礼は昔から

『深川八幡祭り』といわれ、祭り好きには絶対に欠かせない

神輿まつりでもあるのですよ。

祭りの初日は、太鼓の集団が神社への奉納として集まって

くるのです。

神々への響きが 暮れはじめた夏の宵空に響き渡るのです。

多くの太鼓集団の中に、エイサーが入ってくれていることが

なんだか、旧盆の霊を供養するに一番相応しい気がしているのです。

地謡(ジウテ)の三線が響くと、

旗頭を先頭に一団が石畳を踏みならす

ように進んでくる。

大太鼓(ウフデークー)を抱えた太鼓打ちが、

頭巾(マンサージ)にそろいの打ち掛け羽織姿、

ズボンの足元はしっかりと脚絆が巻かれている。

その後ろからは片面だけ皮を張ったパーランクーを手に実にバランスよい

踊りを舞いながらこちらへ向かってくる、

顔に隈取りをしたチョンダラーが道化役で指笛で盛り上げるのです

袖口を捲くった子供のきもの姿のような手踊りの踊り子たちが舞い踊る、

それはまるであの世からやってきた亡霊の姿に感じてしまう。

周りを埋める観客の影が石畳に映りこむと、なんだか、その観客の中に

混じってあの世から戻ってきたご先祖様達が一緒に手拍子を

打っていたように感じてしまった。

「ダーン ダダン! ダーン ダダン!」

何度も何度も繰り返される太鼓の響きは、聞く者の心に

直に響いてくるのです、

何時の間にか、そこに集まった人々は恍惚状態になってしまって

いたのかもしれません、

取り囲んでいた人々の中から、ひとり、またひとりと

見よう見まねの手振りで踊りだす、

理屈など入り込む隙間などないその繰り返される太鼓の響きに

三線が調子を上げる、手踊りの女性人が恍惚の歌声を

あげ始める、いったい此処はどこなのでしょうか 、

もしかしたら、あの世に紛れ込んでしまったのかもしれませんよ。

やがて、エイサーの一団は、こちらに背を向けると、

石畳を戻っていった、

そして視界からその姿が消えたとき、ハッ!と我に返るのです。

「これはまぎれもなく 盆踊りですよ、

 いや念仏踊りと言ったほうが相応しいかもしれない」

まだ身体の中を、あの歯切れのいい太鼓の音が何度も何度も

響き続けておりました。

そのエイサーが正月明けの東京ドームにやってくるのです、

若者達のエイサーはまるで戦場へ赴く兵士のようにも感じられる、

死者の魂を鼓舞する行為は、時には外に向かってほとばしる

エネルギーを導き出すのかもしれない。

沖縄でも400年の歴史を刻んでいるエイサー

人間の持つ生きるためのエネルギーを今も湧き出させる踊りに

今年も観客席からエイサー踊りを見つめています。