浅草三社祭最終日は朝の6時に宮出しされた三基の本社神輿が

氏子44ヶ町を夜の宮入りまで一日掛けて練り歩き、それはそれは

凄まじい神輿振りでございます。

近頃じゃ、そのあまりの武者振りにアタシ等みたいな老人組は

とてもじゃないけど近寄ることもできませんでね。

それでも神輿の傍に居たいのが祭り狂いの本性なんでございますよ。

以前にもお話しましたが、この三社祭と同じ日に、もうひとつの

本社神輿が練り歩く祭礼がありましてね、

三社様の氏子44ケ町と隣接する町内に田島町という昔からの町筋が

ありましてね、今は西浅草二丁目東町会と西町会の二町会だけは

氏神様は浅草八幡神社なんです。

三社祭と同じ祭日に独自の祭りを行っているのが田島睦の皆さんなんです。

その最終日、昼の一時に宮出しされた宮神輿は、半日掛けて二町内を渡御、

夜を待たずにまだ西日の差す中、宮入りが行われておりますよ。

八幡神社を訪ねると、祭礼委員長が

「間もなく宮入りが始まりますよ」

と教えてくださいましてね、それにしてもなかなかのんびりした

雰囲気の中、路地の奥から祭囃子と歓声が響いてまいります。

「此処でお待ちになれば・・・」

との委員長のお言葉を背中で聞いて、身体はすでにその路地の奥に

向かっておりましてね。

神輿の周りはほとんどが地元町内の人ばかり、

最後の町内を廻っていよいよ神社に向かって戻ってまいりました、

お神酒所で最後の休憩をとると、なにやら話し合いが・・・

一本締めが決まるとなんと本社神輿に取り付いたのは全て女衆ばかり

じゃないですか、どうやら女衆だけで担ぐという願いを、

氏子の皆さんが承諾したとのこと、

それは三年前の大祭のことでした、

三百年の歴史の中で初めて本社神輿を女衆だけで担いだ記念すべき年に

なったのですよ。

最後の八幡神社前では男衆女衆入り混じって、神輿は右に左に揺れ動き、

行っては戻りの繰り返し、みんなの興奮が最高潮に達したところで

棟梁の拍子木が響き渡り見事な宮入りが決まりましたよ。

いやいや実に綺麗な宮入りでございました。

祭礼委員長のご挨拶の中に、

女衆による本社神輿渡御が無事出来たことへの感謝と、来年も是非続けたい

旨の提案に拍手が起こった。

女衆が本社神輿を担ぐことなど全く認められなかった祭礼のなかで、

こうして改革が出来ることに感動してしまいましたよ。

三社祭ではとても無理な話でしょうね。

若頭の音頭で三本締めが決まり、今年の例大祭が無事終わりました。

今年一年、きっと御祭神がこの町を見守ってくれますよ。

日焼けした祭り人がそれぞれの胸に感激をいただいて帰っていくと、

本社神輿を本殿に納める最後の宮入りが始まりました。

長老の指示が飛ぶ、

神輿から担ぎ棒が外され、飾り綱が解かれ、屋根から鳳凰が外されると

いよいよ最後の本殿への運び込みです。

神輿は担ぎ棒が外されると持ちにくいものです、若衆がみんなで息を揃えて

本殿へと力を合わせて持ち上げます。

棟梁から声が飛ぶ、

「曲がってるぞ、ぶつけるな!」

そして、無事神輿は本殿の中へ、

こうして一年をご祭神と共に過ごすのです。

最後まで見届けると祭礼委員長から労いの言葉が掛けられ、今年のご祭礼が無事

終了するのでありました。

ああ、祭りとは生き物なり!!