「ああ、春が来た!」

なんて喜んでいると冷たい冬に逆戻り、

初午を過ぎたからといってまだまだ油断はできませんよ、

新暦二月はれっきとした冬なんですからね、

 ♪「春が来た 春が来た何処に来た

    山に来た 里に来た 野にも来た」

なんて子供の頃は大声で歌っておりましたが

そういえば春は何処からやってくるのでしょうか・・・

あの歌では、山にも、里にも、野にも春が来たよ

って喜びが溢れておりますが、アタシは子供のころから

そのやって来た春は、冬の間どこにいるんだろうなんて

考えていたんですよ。

大人になったからって、その疑問が解けたわけでは

ありませんでね、もしかしたらこの寒い季節でも

旅をしたくなるのは、春の在所を見つけられるかも

しれない なんて思っているからかもしれませんよ。

なぜ、そんなに春に拘るのかですか・・・

そりゃ、夏も、秋も、寒い冬だってそれぞれ楽しいですよ、

でも櫻が咲くのは春なんですよ。

その櫻に魅せられてもう半世紀も櫻の姿を追いかけて

いるのですからね、

櫻はいいですよ、ウソをつきませんからね。

その櫻の咲く春を追いかけて随分旅をしてきましたが、

どうやら春は山から下りてくるのではなくて、

海からやってくるに違いないと判ったのですよ。

冬の海風は「ならい」と云って、ベテランの漁師達も

恐れる風ですが、毎日のように海辺に佇んでいると

ある日、その海風の中にぬくもりの塊みたいなモノを

感じることがあっるんですよ。

そんな時なんです

「あっ!春がそこまで来てるよ」と感じるのは。

アタシの住む町は、自転車で15分も走ると、

海に行き着くのですから海辺の町かもしれません、

夕暮れが少し遅くなってきたのも春が近づいてきたあかし、

小さいけれど漁港もあるのです、その漁港に自転車を停め、

そっと佇めば、春を教えに来た風が海の上に風紋を

残して通り抜けていくのが見えますよ。

ほら、水面に風の足跡・・・

「春が来た 春が来た、海から来たよ」

頭をもたげると久し振りの夕焼け、そろそろ櫻の便りが届きますよ。

今年はどんな櫻に出会えるのかな・・・。