束の間の晴れ間を冬の雲が覆い始めておりました。

夕暮れが早くなってきた分だけ朝の時間を大切に

しよう 

などと思い始めたのはあの激しい夏から

切なげな秋色をしっかりと受け止めたからに違い

ありません。

山道だろうが、都会の散歩道だろうが

セカセカ歩いても何ともなかった身体に

異変を感じても、医者だけは絶対に行かないと

頑張っていたのに、

「そんな無責任はゆるしません」

と鬼姫様の一声に しぶしぶと出かけた結果は

日頃の不摂生と好きなものばかり食べていた付けが

ここにきて発覚してしまいました。

『高コレステロール、中性脂肪、高血圧』

要するに現代病三重苦、立派な病気ですと

美しい女医さんは冷たく言い放つのであります。

ああ、やっぱり美人は人の心に頓着されないのだ と

悲しい少年の目で縋ってみても、

「急激な運動は命を絶ちます」

「そんなにひどいのですか」

「長生きしたければ、治療に専念されることです」

それって、最後通告なんでしょうか、

帰宅後鬼姫様に報告

「心臓に聞いて欲しいということらしいです」

「やっぱり自業自得なんですね」

アタシは悲しい目でこっくりと頷くばかりです。

何処からみても病人に見えないおじさんは、それでも

ゆっくりとゆっくりと歩きだすのでありますよ。

「そろそろ人生の秋かな・・・」

じっとしていた白鷺が秋の空に舞い上がった。

「おい、其処から何が見えるんだい」

飛べなくなった旅人は、歩いては休み、

休んではのろのろと歩き出すのです。

 もし歩くことを止めたら・・・

そんなことを考えないようにね。

(2017年12月の日記より)