2010年03月12日(金)
鎌倉時間
『鎌倉』という町に惹きつけられてもう半世紀になる、
知人が多いということもその要因のひとつではあるけれど、
なぜこうも通い続けてしまうのだろう。
今は交通の便がすこぶる良くなって、東京のどこかで
ふと時間が空くとこの町を訪ねてしまうのです。
学生時代の数年間、夏の時期はほとんどこの町で過ごしていた
青春時代、こころの奥にポッと点した灯りがもしかしたら
今でも揺らめいているのかもしれない。
歴史好きということもまた要因のひとつかもしれないのですが、
歴史というものは、目の前に現れるものではなく、
あくまでも想像することで幻のように姿を現すのですね、
その想像力を刺激する数々の歴史の欠片を見つけることが
出来るというのはたまらなく魅力的に感じるのでしょう。
鎌倉の持つ地形、三方を山に囲まれその開けた一方には海、
それも歩ける範囲に四季折々の変化を垣間見ることができるのです。
新緑を迎えた緑の山、
その奥に潜む谷戸、
この町特有の切通し、
今でも辿ることの出来る山の小道、
車社会を絶対に受け入れない小路、
それは現代の合理的で便利な生き方を真っ向から否定するものでもあるのです。
しかし、この町の人々は、不便さを許容してでも、景観を守ることに
心を寄せる日々の暮らしが、訪れる人にも観光地として生きるだけでは
ない人生を垣間見せてくれるのです。
そして、現代の最も惜しまれること、
それはあまりに簡単に地名を破棄してしまう風潮、
便利さと交換してしまう安易な発想、
ある時には、地名は心を振るわせるほどの感銘を与え、
その地名を聞いただけで、例え一期一会の出会いであっても
その出会った人を克明に思い出させてくれるのです。
そんな地名を数え切れないほど大切に残し続けている町、
それが鎌倉。
そろそろ夕暮れが町を覆い始めました、
星の井の小さな十字路を曲がると海の香りが
聞こえてくる波音と共に浜が近いことを知らせてくれる。
由比ガ浜には海を見つめるひとりの老婆、
微かに色ついた西の空に今日と言う日が消えていく。
切なさに気付かせてくれるのもまた鎌倉時間なのですね。
鎌倉由比ガ浜にて
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