ラジオから流れる交通情報

「東名は○○より65km、中央高速道路は渋滞40km・・・」

何だかアナウンサーの声の響きに嬉しさが含まれているように

聞こえるのは、この時期だって仕事をしなければならない者の

微かな抵抗なのかもしれない。

日ごろから旅に明け暮れている暇人オヤジは、この時期は

オトナシク東京にへばりついて、みんなの渋滞の脚を引っ張ることは

すまいというのが、せめてもの罪滅ぼしの積もりなんですが、

本音は、「あの渋滞の中に突っ込んでいけるかよ」

あののんびり寄り道台風が暑さを一緒に連れて行ってしまった

のでしょうか、暑さの東京砂漠も夕暮れとともに

季節がひとつ繰り上がったような涼しさ、

一番暑苦しい人込みが消えてしまうという、

東京では滅多に体験できない数日間ですからね、

おめおめと無駄に過ごしてなるものかと

夕暮れ散歩に出かけるのでありますよ。

「カーン カーン、カーン」

踏切が閉まった、

暇人にとってはどーってことない時間ですがね、

どうも時間に追いかけられて生きている人たちにとっては

たとえ3分だって、待ってる時間は

無性に腹がたつらしいのですよ。

「何で高架にしねーんだ、たかが電車が通り過ぎるだけ

 なのになんでオレが、立ち止まってなけりゃならないのか」

こういう意見が集まりだすと、待っていたように

「そうですか、それでは高架にして、ついでですから駅前を再開発して

 青山や六本木のような美しい町にいたしましょう」

なんて、したり顔の先生が現れたりしたかと思うと、これが民意ですからと

みんなで人間らしく住んでいた町は、ブルトーザーが次々と襲い掛かり

見事な美しい夢のような街に造り替えてくれるのですよ。

何処の町だか全くわからない、近代化された街 という名のビルとコンクリートの

街にね・・・

そんな街を日本中沢山見てきました、

消防法と建築基準法によって、細い路地にひしめき合うかつての下町は

こうしてこの世から消えていくのです、

大型スーパーが出来ると、同じものを売っていては地元の個人商店は

対抗出きる訳はありませんよ、仕方なく小回りの利く利点を生かして

決して無くならないお惣菜を安く売るんです、

店主と客が、レジを間に無口に通り過ぎる姿は此処にはありませんよ、

大きな声が行きかい、笑い声がこだまする商店街には、昔のままの

人情が通い合っているんです。

今や下町の代表になったこの町にも鉄道の高架化が決定しましてね。

今は夕方の買い物客で賑わっている商店街もその地主が

某地方自治体となれば

この商店街がビルに建て替えられるのは時間の問題でしょうね。

立ち食いすし屋、仕事の後にひっかける立ち飲み屋、

ホルモン焼きに焼き鳥、

安くて、あったかくて、庶民のための庶民の下町が消えて

しまうのかもしれない

きな臭い匂いが立ち込め始めたこの町をこの町の人々は、

どんな結論をだすのでしょうか、

「カーン カーン、カーン」

踏切が閉まると、買い物袋をぶら下げた顔見知りが

おしゃべりに余念がない、

立ち止まることの楽しみが消えてしまう町の真ん中で、

何時までも立ち尽くしている下町散歩の途中であります。

できれば残って欲しいけれど、

それはこの町の人たちの決めること・・・