珍しく朝からずっと机に向かって仕事をしていたら、

腰は痛くなるし、背中はパンパンにツッパリ、

眼はショボショボ、

「ああ、歳をとるとはこういうことかな」

などとぶつぶつひとりごと、

窓の外を見ればもうどっぷりと夕闇が覆い尽くして

いるではありませんか。

「ヤーメタ!」

仕事は逃げやしないが、もしかしたら今日の福は

待ってくれないじゃないか、

なんて屁理屈くっつけて、いつもの夕暮れ散歩へ、

師走の羽子板市が終わるとさすがの浅草も一息つける

静かさが滲んでおりますな、

今は浅草の素顔が味わえる滅多にない時期なんですよ。

ひょいと路地を曲がれば、ここにも今日の福が

あるじゃないか と思わせてくれるので

師走の残り日のこの時期が大好きなんですよ。

あれ、おまえさんもう出てきたのかい、

いくらなんでもまだ十日もあるのに

酉の横に、ちゃっかり来年の戌がにっこり、

そうか、今年は我が家にワン公がやってきたから

まだまだ元気でいないとね、

そうだ、こういう運のいい日は 観音様へ

と裏路小路を抜けて観音様にご挨拶、

「今年もどうやら病気することなく過ごせそうです」

とお賽銭をチャリン!

あれ、ご返事がありませんですよ、

そうか、お願い事にしては少なすぎたか・・・

今度は奮発して野口英世さんをそっと賽銭箱へ

「まだ十日残っております、油断めさるな」

「ハハーッ!」

やっぱりお参りは気持ちがいいですな、

「金の多可で区別するな」

とおっしゃるんですか、

これはね、自分のこころの持ちようなんですよ、

地獄の沙汰も金次第、まして願い事はタダってわけにゃ

いきませんですよ、

これも、自分自身へのいましめでね、

金銭は肝心なところでケチルとロクナ結果にならない

というアタシの経験なんでしてね。

さてと、清々しい気持ちになると、背中のツッパリも

消えていますよ、

これで元気になれるならどうです安いもんじゃないですか、

浅草はね、昼間のお祭り騒ぎと、夕暮れからの静かな時間を

味わえる両極端がいいのでしてね、

暗がりの向こうに、時代を乗り越えてしまえそうな路地が

隠れているんですよ。

そういう小路を見つけられたら、生きていることが

楽しくなれますよ。

それじゃ、ちょいとその路地へ・・・

(2020年は振り返ると辛いことの連続ですよ、
 
 記憶を辿って三年前の年の瀬を思い出しながら

 あの頃は楽しかったね・・・)