(東京 谷中)

「暑さ寒さも彼岸まで」

とは言い古された言葉ですが、なるほどお彼岸を

迎えると、気分だけではなく本当に温かくなっているんですね、

気象学のように数字を並べて説明できればいいのですが

アタシの人生など、適当な判断で生き続けておりますので

お彼岸を境にあの震えるような寒さから解放されると思う

だけで思わずニンマリできるのですからありがたいじゃないですか。

(千葉 北小金)

それじゃ毎年同じように季節の変わり目があるかというと

そうならないところも、アタシのいい加減な性格に合うらしく、

梅の花も咲きそろったからそろそろ桜が咲くに違いない と

お彼岸を境に、早起きになるのも今年はいつもより始まりが

早くなりそうです。

東京の桜もいよいよ開花いたしましたね、

さくら狂いを任じて生きてきただけに、アタシにも桜の基準木が

ありましてね、

早起きして必ず見に行く桜の木が三本あるんです、

その三本の咲き方で、そろそろ桜旅を始める準備をするのです。

(埼玉 坂戸)

このところ毎年開花が早まっているようです、

特に東京は南の地域より早いくらいで、どうやら都市型温暖傾向が

影響しているのでしょうかね。

東京の桜を確かめてから徐々に桜を追いながら北へ旅するという

今までのやり方が出来なくなりましてね、

東京から西に向かったかと思うと今度は北へ、

昔の桜は順序正しくて付き合い易かったのに

今は複雑で準備など出来なくなってしまいました。

(埼玉 ふじみ野)

人間の予想なんて自然の前では当てにならないと身に染みて

教えられていたんですから、予定なんて立てない方が

ガッカリしない分精神にダメージを受けませんですよ。

気象学なんてなかった時代、古人たちは陽気の変化を

風や雨、雲の流れ、植物の生育、花の咲き方など、肌や目にする

事象から判断していたんですね、現代はなまじ気象庁が天気予報

なんていう便利な情報を教えてくれるようになって、人は自ら

感じる感性を捨て始めてしまったんではないですかね、

(群馬 高崎)

人間だって生き物ですから危険を感知する能力を備えていたはずです、

それを、他人の情報に頼って生きた方が楽だと感じると、

途端に今まで備わって感知能力が低下し、いや低下するだけではなく

まったく失ってしまうとしたら、急激な天候変化にさえ呑気に携帯の情報

を見ながら他人事のように眺めているだけで、逃げるという一番最初に

行動しなければならない一歩さえも遅れてしまうのですよ。

(栃木 佐野)

自然界は陰陽によってできていて、生き物はその陰陽に左右されながら

生きていると考えたのが古人たちの気候に関する考え方なんです、

陰の極致が冬なら陽の極致が夏、一日の中でも陰が夜で、陽は昼、

陰が静、陽は動、その陰と陽が近づいてきて重なり合うのが

お彼岸の頃なんです、

その陰と陽が重なり合うと生き物はどうやら身体を開いたり、閉じたり

すると考えたのでしょうね、

その陰と陽が重なり合う頃を「和気」というのだそうで、

身体も気持ちもバランスが取れていると感じていたのかもしれませんね。

(山梨 身延)

その「和気」が満ちていると春なら自然に身体が開き始め、

秋なら身体を休めて夏に消耗した体力をこれ以上無くさないように

労わり始めるのです。

動物も植物もみんなそうしてこの「和気」を敏感に感じ取って

生きているのですね。

人間だけが違うと思うことは、自然のサイクルを無視した思い上がり

と言われても仕方ないのでは・・・

そんな「和気」を感じたら、ほら梅が咲き、気の早い桜だって

動き始めていますよ。