今や灼熱都市の名を熊谷から移籍した感の館林で

ふと温度計を見ると なんと32.1℃。

気分は秋のつもりでしたので、暑さで気が遠くなりかけましてね、

「千米の山の上へ緊急避難」

とばかり、宇都宮から日光目指して走れば、

一天にわかにかき曇り、まるで黒雲逆巻き、

土砂降りなんて生易しい雨じゃありませんよ、

「これがゲリラ豪雨か・・・」

何しろワイパー ハイにしても前が全く見えないじゃありませんか、

SAに避難して、しばらく様子をみていると、

あっという間に黒雲は山の彼方へ遠ざかり、

一気に温度が下がっておりますよ。

「しめた、この分なら中禅寺湖まで

上らなくても涼しいかもしれない。」

急遽、日光東照宮へ、

あの雨ですから、さすがの観光客も雲の子散らして

逃げ惑ったのでしょう、

残暑の夕暮れとはいえ、ほとんど人影はなし。

こういうのを神の功罪というのでしょうか。

雨をやり過ごした者だけに至福の時を

用意してくれていたのですかね。

緑したたる参道を、二荒山神社へ

ずぶ濡れになった、恋人同士が一度濡れてしまえば

あとはどうにでもなれと傘もささずにおみくじを引く。

きっと福クジだったのでしょう、

大きな笑い声がその結果を物語っておりますよ。

「このおみくじは何に利くのですか」

巫女さんにお尋ねすると、

「縁結びに霊験あらたかでございます」

それではアタシもとおみくじ引きかけて思い出しました、

そうだ、今年は何度引いても凶ばかりでした、

それに今更、縁結びもないだろうと、

引きかけた手をすーっと引っ込めて、本殿で旅の無事を

お願いいたしましたよ。

さすがの世界遺産の観光名所も

ゲリラ豪雨には歯が立たず

これ以上内ない静かな刻を堪能して、

霧降る高原へ

雨上がりの山は、正にその名が正しいことを

知らせるように霧に咽ぶ森でありますよ、

いつもの 『森のレストラン』で少し早めのディナー、

料理は特上、サービスは満天、大人が一人で食事をするのに

これ以上いい雰囲気の店はそうは滅多にあるものではなく、

ゆったりとしたディナーを終えた後は、香り高い珈琲を

飲みながら読書を楽しむのでありますよ。

レストランを霧がすっぽりと包み込んでしまったのだろう、

窓の外は森が真っ白に染まっている。

「今、気温はどのくらいですか」

「22℃でございます」

とマネージャーがにこやかに伝えてくれた。

これも雨の効用ですよ、

もうしばらく、読書を続けますかね。