アタシの住んでる国じゃ、神様ってーのは星の数ほど

いらっしゃるわけで、

太陽に月、山や川、岩や樹にだって神様がいらっしゃると

考えるし、実在した人を神様に祀り上げるなどお茶の子さいさい、

要するに都合のいい時だけお願いするというのが

丁度いいのでありますよ。

浅草じゃね、そもそも一人の親方と二人の漁師さんを

三社さまと神様に祀り上げて、みんなでニコニコ生きられる

のですから

まあ、あまり目くじらを立てないでくださいね。

と前振りをやわらかくしたのは、世の中景気がちっとも

良くならないと、行き交う人の顔も、口は尖がっちまうし、

ちょいとした物言いで喧嘩になっちまうし、どうにか

なりませんかね、 

こういうご時世になれば後は神頼みしかありませんでしょ。

いつもの通り浅草をぶらり、

おりましたよ、六芸神がずらりとおそろいで、

芸人というのは昔から人間様より神様の領域に近い存在

なのでしてね

そりゃ、自分が笑いものになって、みんなのこころを

和らげたり、音楽奏でてみんなをいい気持ちにさせたり

するんですからありがたい存在なんですよ。

浅草六区は昔からそういう半分神様みたいな芸人さんが

世の中を和らげてくれていた芸能の聖地なんでございましてね、

そこへ舞い降りてくださったのが 六芸神さまというわけでして、

そりゃ、千年の歴史はございませんし、何しろ見てくれが軽そう

なんで信じられるかどうかは、人それぞれございますが、

昔から 鰯の頭(かしら)も信心から と言うじゃございませんか

信ずる者は救われる のでございますよ。

町の角々に何気なく立っておられるので、御気づきの方も多いとは

思いますが、あの小さな六芸神神社に鎮座しておりますのは

依り代でして、後本体は何気なくお立ちになられている顔のない

お姿なのでございますよ。

1) 唄神(うたいがみ)

2) 奏神(かなでがみ)

3) 演神(えんじがみ)

4) 戯神(おどけがみ)

5) 話神(はなしがみ)

6) 踊神(おどりがみ)

そっとあの顔の無いお姿の中に自分の顔をつっこんでみてください

ほら、みんな好い顔になってるじゃないですか、

その場から立ち去っても、もうあなたの肩にへばりついて下さって

おりますですよ、

なんだかしらないけど、

急に笑い出したり、

ムヤミヤタラに人に優しくなったりしても驚かないでくださいね、

それはみんな 六芸神のなさることですから、

こんな、ギスギスしたご時世だからこそ、

六芸神様にそっと手を合わせているのでございます。

「○○ノバカヤロウ!」 っていくら叫んだって世の中急に変わる

もんじゃございません、

それなら、浅草に来て 神様に手を合わせ、六芸神さまに

顔をつっこんでみるほうが、少なくても いい顔にだけは

なれますからね。

それでも足りなければ、

雷神さまも、風神さまも

金龍さんに、天龍さん

仁王様に、オキツネさま、オタヌキさまだって

おられますからね、

そうそう、おみくじに占いなんて方法もございますから

ご安心を。

この国は八百万(やおおろず)の神の国、最後に残るのは

神頼みなのでございます。

其処のアナタ、目が釣りあがってますぜ・・・ 

浅草 六区にて