五月の声と共に始まった下町の夏祭り、

鉄砲洲稲荷祭礼、下谷神社大祭、を皮切りに

神田明神輿渡御に続いて

浅草三社祭に浅草八幡神社祭礼

場所を上野界隈に移して

湯島天満宮例大祭、五條天神社大祭

もう次から次へと息つく暇も無い祭り三昧の日々、

さて月も替わって水無月は

白鬚神社祭礼に高木神社の例大祭さらに

長浦神社例大祭と

身体を休める暇もありませんですよ、

と言いながら顔は綻んで

あっちへヨロヨロ、こっちへノッソリと

相も変わらず祭り三昧でございますよ。

さてと今週は墨田地区の隅田川神社と墨田稲荷神社の御祭礼、

こちらはお隣り同士のお祭りですので、あっちへ行ったり

こっちへ戻ったりしながら、無事宮入りを見届けて

さてとこれから鳥越神社の千貫神輿の宮入りへと向かう頃には

さすがに体力消耗してヘロヘロ状態でございますよ、

やっぱり年には勝てなくなりましたな。

これ以上ないだろうという上天気、こういう日を祭り日和と

云うのでしょうね。

早速、鳥越神社へお参りに、朝のうちに出立された御本社神輿の

お姿は既になく、舞殿では奉納神楽に目を奪われる、

何しろ、三社祭のように見物客が溢れるなんてことはありませんので、

のんびりとした気分がいいですね。

宮元の神輿が境内に運ばれてくる、いよいよ各町内の

神輿の宮入が始まりました。

神主さんのお祓いが済み、町内神輿が出てしまうと、

後は、御本社神輿のお帰りを待つことになるのですが、

当然、夜の帳が降りなければ戻っちゃきませんので、

こちらから迎えにまいりますか、

露天を冷やかしながら路地裏を祭り囃子の太鼓の音を頼りに

あっちだ、こっちか とうろつく先で、見つけましたよ。

先頭は美しい手児舞の娘さん、次には神様を先導する

猿田彦(天狗)が一本歯の下駄の音を響かせて

いく、五色の旗を持った少年達がもみくちゃに

されながら通り過ぎるといよいよあの千貫神輿のご登場です。

「大きいね!」

思わず周りの見物人から声がかかる、

大きいだけじゃなくて、重たいのもまたこの神輿でね、

それに出会った場所が狭い路地、重たい神輿は当然多くの担ぎ手が

いなければ動きやしませんですよ。

「前をあけろ!」「邪魔だ!邪魔だ!」

そう罵声を浴びせられても、後ろは他所の店、逃げ場などありませんですよ、

担ぎ手と一緒になって揉みに揉まれてみんなヘトヘト、

さすがに神様のお乗りになる大神輿の威力はすごいですね、

担いでいる者も、周りで支えて居る者も、見物人も、

気が付けばみんな元気を貰っているんですよ。

「爺ちゃん大丈夫か!」

若者が声を掛ける、

「なーに、まだまだ若いもんにはまけられねー」

云ってる傍からけッ躓いてよれたところを、傍の若者が支えてくれた、

「おお、気が利くね」

爺ちゃんも負けてはいないのですよ。

さてと、夜の宮入りに供えて大休止、

大神輿に弓張り提灯が飾られ、役員、棟梁、担ぎ手が

続々と集まってまいりました。

テロの心配もあるので、警察車両で道路を封鎖、

厳戒態勢の中で、いよいよ最後の神輿振りでございます。

親父の肩の上で、この美しくも壮大な祭りを見つめていた子供達は、

やがて、次の世代を支える若者に成長していくのでしょう。

祭りはこうして人間を成長させながら、前へ前へと進んでいくのですよ、

世代を引き継ぐというもうひとつの大儀を乗せててね・・・

(2017年水無月に記す)