仕事が一段落してふと窓の外を見上げると

もう街は夕暮れが覆っておりますよ。

秋の足音はもうそこまで来ていることを

街にいても感じるこころを持ち続けたいと

ふらりふらりの下町散歩。

爺さんは立ち止まったまま動こうともしない、

どうしたんだろうかと様子を伺っていたが

それでも動く気配がない、

「爺さん具合でも悪いのかい」

その爺さんは薄目を開けてこう云った

「いい気持ちで眠っちまったよ」

人生年季が入ってくると、立ったまま眠っちまうんですよ。

きっと、あのまま天国へ行っても気がつかないかもしれないやね。

路地の奥には、ちらりほらりの灯りが点る、

縄暖簾の向こうに仕事帰りのオヤジたちの足が並ぶ、

みんなリラックスしてるのがその立ち姿に現れている、

酔いが廻るほどに声高にがなる声、

下戸のオヤジにビラまきの若者が声をかける

「いい娘おりますよ」

しらふじゃ入れぬ禁断の店、

アタシには一生縁がありませんよ

考えてみれば、ふらふら歩いているだけで楽しいのだから

これが一番安上がりじゃないですか、

後は、不審者に間違われないように挙動不審にならない歩き方を

身につけていないとね。

貼り紙に

「不審者を見たら110番」

夜の巷は路地裏の灯りが吉とでるか凶とでるか

案外スリル満天の東京散歩でございます。