東京にも紅葉季節はやってきますよ、
その代表は東京の象徴でもある銀杏並木の黄葉として
その美しさを毎年飽かずに見せてくれる。
毎年の黄葉が当たり前の習慣になってしまうと、その夏色の葉から
少しずつ変わっていく葉の色合いに注意することなどしなくなって
いたのですね。
いきなり黄色の絨毯を敷き詰めた道を歩くだけの黄葉として
いいとこ取りの薄っぺらな楽しみとしてね。
夏色の濃い緑から少しずつ彩を変えていくその葉は、消して褪せているのでは
なく、日一日と微妙な色の違いを見せていることに気づいたのは
ほんの些細な出会いでした。
「随分仲がいいのですね」
手を繋いで歩いていた老夫妻に声をおかけしたのは久しぶりの
青空のせいだったに違いありません。
「いやいや、違うんですよ、こうして手を繋いでいないと
転んでしまいそうなのでね」
本音なのか照れなのか笑顔と共にそんな応えがかえってくるのでした。
「今頃の黄葉はとても美しいのですよ」
そう言って見上げた木々の葉が夏色でもなく、
かといって秋の彩りでもない
微妙な黄味掛かった薄緑の輝きを見せてくれていたのです。
「こんな美しい色合いがあったのですね」
アタシは暫くぽかんと口を開けて見とれておりました。
「それでは」
そう言うと、老夫妻は穏やかな秋の陽射しを浴びながら
お互いをかばい合うようにゆっくりと坂道を登っていくのでした。
少しだけ秋色に染まり始めた桜葉が、此処が桜の名所であることを
思い出させてくれていた。
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