今や人工衛星が月や火星、金星や木星にまで飛んで行く
時代になりました、科学の発展は留まるところを知らず
でありますな、しかし、肝心の生身の人間の方はどうか
というと、そんなに近代化されているわけではありませんでね
今年も正月三が日の初詣の人出は九千万人を超えたという
ではないですか、その行動を支えているのは科学に裏打ち
されていない縁起を大事にしている証じゃないですかね。
浅草で日常を過ごしていると、縁起物担ぎには事欠かない
のでありましてね、
七福神巡り、宝船、破魔矢に絵馬なんていうのは序の口で
正月の福笑い、羽根突き、独楽廻しに凧揚げなんていう
子供の遊びも縁起物なんですよ。
節分の豆まき、三月の雛人形、五月の武者人形に鯉幟、
夏の朝顔市にほうずき市、彼岸のぼたもちにおはぎ、
七五三の千年飴、酉の市の熊手、羽子板市の羽子板に
歳の市の注連飾りとなんと沢山の縁起を担いでいるのでして、
あっ、そうそう忘れちゃいけない招き猫、
えーと、だるま がありましたっけ。
関西じゃあまり流行ってないようですが、だるまといえば
北関東のダルマ市を忘れちゃ困りますよ。
その代表は高崎少林山達磨寺のだるま市、
家内安全・商売繁盛に効き目があると毎年数十万人の人出で
賑わうというので今年こそはと待っておりましたら、
1月の6、7に掛けてすでに終わっていたんですよ。
「小林山七草だるま市」というのだそうで、相変わらず下調べ
しないおっちょこちょいのオジサンは見事に今年も空振り
でございます。
TVをぼんやり見ていたら、前橋初市まつりの様子が映し出され
だるまがずらりと並んでいるじゃないですか、
それ行け!ってんで上野駅から飛び乗った高崎線に揺られて一路前橋へ、
いやいや各駅停車の高崎行きは時間がかかること、
高崎駅で上毛線に乗り換えが20分待ち、その時間を利用して
何十年ぶりに駅の立ち食いそば屋さんで腹ごしらえ、そういえば
飯田線で信州飯田から豊橋まで旅した時以来の立ち食いそばは
中々旅情を感じるものですな。
二時間半掛かってやっと前橋駅に到着、新幹線なら大阪まで行かれる
時間ですな。それに上毛線の列車は駅に着いてもドアーが開かないの
ですよ、モタモタしていると高校生が「自分の手で開けるんですよ」と
教えてくれましてね、東京あたりじゃ便利に慣れすぎていてドアーの
開閉は自動が当たり前だと身に染み込んでいたんですね。
北関東の寒の入りは寒さが募るわけで、乗り降りする人のためのドアー
だけが開け閉めされるわけで、他のドアーは閉めたままですから、乗客は
冷たい風にあたらなくて済むわけ、実に理にかなったやさしさまで
感じられるわけですよ。
なんでも便利にすればいいというのは、行き過ぎることになると無味乾燥
な状況になる と
旅の途中で教えられておりましたよ。
さて、駅を出たものの、だるま市がどのあたりでやっているのか皆目検討が
附きません。
こういう時に、スマホとかいう便利なもので検索すると黙って誘導して
もらえるらしいですが、アタシは機械(スマホは機械だと確信している)に
先導されるのが大嫌いで未だにスマホは持っておりませんでしょ、
どうするか、そこはスマホより年の功、ちょいと他人様にうかがえば、
丁寧にその場所まで連れていっていただけるのですよ、これもみんな
旅の中で会得した方法、何も得意そうに言うことはありませんが、
昔はみんなこのやり方で、不便は感じなかったのですよ。
「前橋初市まつり」は国道50号線を前面閉鎖して凄い数の露店がずらり、
これも聞くところによると、江戸時代から続いているとのこと、昔は
生糸市がその最初らしく、国産生糸が日本の輸出の大半をしめていた
明治時代は相当の賑わいだったとか、
そもそも だるま は生糸の繁栄を祈念して作られたとのことで、
生糸が消えてしまった後に、だるまが残ったということなんですかね。
最近は、どこの市でもほとんどが食べ物屋の露店ばかりで、風情が
無くなってきておりますが、さすがは だるま の威力は凄いですね、
お客さんも、盛んに値段交渉で楽しそうに値切っておりますな、
八幡様の神輿が仮宮に鎮座されておりますよ、その右隣は大獅子、
左には大だるま、まずは仮宮に参拝してから露店に群がるという
わけですな。
縁起物は定価が書いてありませんので、言い値に対して値切るのが
仕来りなんだとか、そのやり取りを楽しむのも 市の持つもうひとつの
楽しみ方らしく、盛んにお札が飛び交うあたりは、縁起がいいじゃないですか。
アタシもその買い手になって値段交渉、しかし、帰りの列車を考えると
大きなだるまは大荷物になりすぎますよ、小さな招き猫とアタシの干支の
申の三番叟を所望、
招き猫は以前、伊勢崎のだるま市で買ったことがありましたので交渉は実にスムース、
どうやら今年は人に招かれる旅になりそうな予感の旅の途中でございます。
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