魑魅魍魎ってご存知ですか

魑魅とは、山林の異気から生まれる妖怪で

顔は人間、体は獣の姿をしていて、人を迷わせるのですよ、

魍魎は川から生ずる妖怪で、姿かたちは幼児に似ていて、

二本足で立ち、赤黒色の皮膚をして、目は真っ赤、耳は長く、

美しい髪と人に似た声をを出すらしい、なんでも死んだ人を

食べて生き続けているらしい。

そんな妖怪が何処にいるのかですって、

昔から、人の大勢集まる巷に密かに住み着いているんですよ、

京の町など戦があったあとなど町中に死体がごろごろと

横たわって居た時代など、もう魑魅魍魎の巣窟だった

というじゃないですか。

都が京から江戸に移るとね、人の流れが変わる訳で、

日本中から江戸へどっと人が流れ込んで、

あっというまに当時じゃ世界一といわれるほど

人が集まっちまったわけですよ。

人が江戸に集まり始めると、

何処からとも無くあの魑魅魍魎たちも一緒に

やってきたんですな、江戸の中でも浅草は魑魅魍魎たちには

居心地がよかったらしく、

今でも時々顔を出すのですよ。

毎年一月十八日は初観音、あまり大きい声じゃ言えませんが、

浅草中に巣くっている魑魅魍魎を禁足地の穴の中に封じ込める

という儀式が今も行われているのですよ。

ですから初観音からしばらくは安心して町の仲を闊歩できる

というわけなんです。

実は浅草には魑魅魍魎の世界に詳しい婆様がおりましてね、

アタシも懇意にしていて時々話を聞かせてもらってるんですがね、

その婆様の歳ですか・・・

なんでも、初代新門辰五郎さんとは幼馴染だと

言い張るのですから、

さていくつになるやら、普段は宵闇が迫る頃になるとね、

お白粉塗ってどうみても三十そこそこにしか見えない

いでたちで人の手相なんかを見ているんですよ。

「あの猫達が おいでおいでしている時は

 気をつけるんだよ、招かれちまうからな」

すーっとすれ違ったのは・・・

そのとたんにアタシは背筋が凍りつきましてね、

「な・な・なんだ今のは・・・」

歩いているのに足音ひとつしないどころか、その歩いた後が

ぐっしょりと濡れているんですよ、

アタシは一目散に逃げ出しましたよ、ちょうどあの婆様が近くにいたので

「い・い・いまのはなんだい・・・」

「あれ、よく気がついたね、ありゃ あやかし だな」

なんでも、海で死んだ者が仲間を求めて現れるのだそうで、

「なんで、浅草に現れたのかね」

「昔は浅草の目の前が海だったからな、あまり長く生きすぎて未だに

浅草に居ついちまったのかな」

「害はないのかい・・・」

「そりゃ近づかないほうがいいに決まってるさ、

 隅田川に引き込まれればそのまま海に連れていかれちまうからな」

手相見の昔の婆様は ニカッ と笑った。

浅草の夕暮れはくれぐれも油断なされませぬように・・・

(見分け方ですか・・・、写真を写すとピントが
 合わないのでご注意くださいな)