オヤジさん、

夕闇を待っていたように、

灯りの点された山車が

動き出した、

笛の音は、あの若者に違いない、

余韻がふた周りほど豊かになっている

闇は少しずつ、刻を逆さまに引き込んでいく

気が付けば、そこは江戸のざわめき

曾爺様が笛を吹く

そうだったのです、

今だけが生きているのではない

曾爺様たちの心意気が今を動かしているのです

今と昔を同じ次元で語れるなんて、

祭りのほかにありますか・・・

祭にはどうやるかなんて書き物はないのです、

先人たちが一番いい方法で身体を通して

伝え続けたことしか

伝わらないのです

だから祭りを途中で止めることは、

町が死んでしまうことに

繋がるのです

ほらあの太鼓が聞こえますか

笛は、鼓は、

みんな江戸時代のままなんですよ

どんなに屁理屈をつけようと、

三百年続けた事実は消せないのです

闇の向こうから響いてくるのですから

今年も、小野川のほとりで

静かに耳を傾けています

人の足音がパタリと消えたとき

確かに聞こえておりました

あの曾爺様たちの笑い声が・・・