東京の桜は靖国神社のソメイヨシノに五、六輪の花を

咲かせたところから始まるらしい、

上野、向島、千鳥ケ淵、播磨坂・・・

東京がソメイヨシノ一色に染まるのですよ、

染井村の園芸家河島権兵衛によって発見された吉野桜は

瞬く間に幕末の江戸で人気の桜になったという。

時代は明治維新でがらりと変わると、西洋文化があっと云う間に

街の姿を激変させた、

明治十年代、銀座に煉瓦造りの洋館商店街が建てられると、

あの吉野桜の苗が並木として植樹されたのです。

銀座といえば、柳の並木が思い出されますが、

最初は桜並木だったのですよ、

しかし、銀座の桜は十年もしないうちに、

枯れてしまったといいます。

どうやら日照不足と極度に排水の悪い地質が

桜を育てる環境になかったということなのでしょう。

その後、銀座の通りには柳が植樹され、ガス灯が輝き、

銀座の並木道として定着すると、もう誰も銀座の桜並木を思い出す

人はいないところか、桜並木を復活しようという試みは

絶えてしまったのです。

今年は例年になく桜(ソメイヨシノ)の開花が早いと

ニュースは盛んに伝えている、

もう明日あたりには咲き始めるかもしれない、

なんて気を持たせながら今日も冷たい雨、

3月21日に開花した東京の桜はそれから二週間、

まだ満開になりませんよ、

あんまり気を持たせ過ぎじゃありませんかね。

靖国神社や上野の桜が咲いても、銀座は静かな桜日和、

いいんですよ、造花の桜だって気分くらいは出ますからね。

木村屋の桜あんぱんを買ってひとくちかじれば、

口の中に桜の香り、

隣の真珠屋さんは間もなく建て替えの姿を現すでしょう、

どうですか、桜気分になりますでしょ。

そういえば、卒業式のシーズンじゃないですか、

最近流行の着物にはかま姿の女子大生、

ああ、肩から桜が舞っています、

銀座の桜は華やかですな。

ビルの上から美女の視線を感じながらの銀座散歩、

やっぱり春はいいですね、

でも寒い!

喉が渇いた!

風月堂でティータイム、

実はねこの店の さくら餅が実に旨いのですよ、

それに日本茶を出してくれるんですよ、

ガラス越しに通りを歩くさくら模様を眺めながら

「これが銀座のさくらかな」

てな具合ですな。 

(2017年3月末に記す)