正月の祝い膳を目の前に今年こそ己の意志薄弱とはオサラバだ

とぐっと我慢をしたおかげで正月の体重変化は+-ゼロで

見事にクリアー、

なぁーに禁煙(一日60本吸っていたんですよ)を

達成したことを思えばたいしたことはありませんですよ。

何しろ毎日歩き回るには、まずは健康第一、

金も女も縁の無くなった爺に残された最後の牙城だけはどうしても

守らないと人生終っちまいますからね。

「亭主元気で留守がいい」

なんてあなた冗談だと思っていませんか、

あれは世の奥方の歯に衣着せぬ本音でございますよ。

仕事で築いた亭主の人生の誇りなど、仕事を卒業すれば

あっという間に地に落ち、朝から晩まで家に居て

三度三度の「メシはまだか」なんて言っててごらんなさいよ、

そのうち呪いのかかった視線が身体に突き刺さるのが

セキノヤマなんでございますよ。

平日の鎌倉辺りへ行ってごらんあれ、

貞淑な昔のお嬢様たちが嬉々として自由を謳歌しているのが現代、

全て亭主が元気で留守だからできること、

その亭主が朝から晩まで家に居たら奥方に角が生えるどころか

時には殺意の籠もった言葉が飛び出すのは時間の問題ですよ。

「あら、何処にも行かないのですか」

「私今日は予定がございますので」

なんていうのが会話のほとんどになるのですよ。

この平和な日本という国は、親父たちが懸命に仕事していたから

成り立っているなんて、アナタまさか思っていないでしょうね、

もうとおの昔から、選挙も、仕事も、文化も、娯楽も全て女性の手に

握られてしまっているのですよ、

男はただの邪魔者、若いだけで 男だか女だかわからないひ弱な

な男なんて誰が相手にするものですか、

その逞しい女性が苔の生えた甲羅を背負っているのがアナタの奥方、

もう、人間を超越して魑魅魍魎の世界、

世間知らずのお父さんなど軽くイナサレルだけなのですよ、

こういうことを身に沁みて感じるのが、旅をするということ、

旅に夢があるなどとはユメユメ思わないでくださいよ、

と散々脅かしたところで、本日は 七草粥、

一年の無病息災を願っていただくのでございますよ、

しずかにかに粥をすすり、食べ終わりましたら両手を合わせ

「有難うございました」

勿論、奥方に向かって頭をさげると、

「それでは出かけてまいります」

「何処へ行けばいいのですか」

ってそんな縋る目でアタシを見ないでくださいよ

行き先なんて決めなくたって、元気な足があれば何処へでも

いかれますよ、

「お金がない」

またすぐにお金の心配ですか、

歩いていくのにお金は必要じゃありませんよ、

そう、やっと気が附かれましたか、散歩 です。

散歩には知的な雰囲気がただようのですよ、

お金を使わずにただ歩く、身体の健康を取り戻すに

こんないいことはないのですよ、

アタシは二十年続けて無病息災実証しておりますから、

どこの町を歩いても必ずあるのが古書店、

じっくり探すと面白い本が向こうから呼んでいるのが

わかりますよ、金数百円也でそんな本が手に入った

時は宝物を掘り当てた気分を味わえますからね、

その本をひと休みした公園のベンチで読み始めれば、

5分もしないうちにコックリ、コックリ、

えっ表は寒い!、

そんな時は、どこでもあるでしょ、

図書館、駅、○○ポートなんていう商業施設、冷暖房完備で

無料でベンチまで用意されておりますよ。

あとはアナタがどう生きてきたかを問われる人生の過ごし方を

考えさせられるだけ、

自分はいろんな人のおかげで生きてこられたなんてことに思い至れば、

優しい亭主がいっちょ出来上がり。

あなたの人生ですから、創意工夫をお忘れなく、楽しい残りの人生を

お過ごしください、

明日、居なくなるかもしれないのが人間なんですからね。