『あらためて益なき事は

  あらためぬをよしとするなり』

     吉田兼好「徒然草」より

人間は誰でも利己主義のかたまりでね、それでも

自分以外はそうではないと考えるものなんですね。

自分が頼まれたら絶対に引き受けないことでも、

平気で相手に頼んだりできるのはその利己主義の代表じゃ

ないですかね。

世間には暗黙の決まりごとがあるもので、

それはどんなに親しい親友でも一線を越えてはならない

ということ。

特に気をつけなければならないのが、好意の押し付け、

特にそれが正義に裏づけされた(本人だけがそう思っているだけ)

好意などはわずらわしいばかりで、親友ならなおさら

気をつけなければ、人間関係さえも壊れることがしばしば

起こりえるのですよ。

特に正義は分別の鎧を身につけて迫ってくるのですから、

これ以上始末の悪いことはないのです、

さらに気をつけなければならないのは、

正義の味方のなかには人を攻めることが

大好きな人が多くてね、

自分のことは棚に上げて、やたらに正義の御旗の下に

固まって徒党を組んだりするのでますますもって

始末に追えないのですよ。

どうやら最近はこの手合いが増えていませんかね、

あれはきっと自分の不平不満を形を変えて

盛大にののしる快感に浸ってるとしか思えませんがね。

世の中を改革するのが流行りみたいに世間じゃ

大騒ぎしておりますが、

正義の名の下に、何から何まで変えてしまうことが

いいのか、よーく考えてみてから選挙では大事な一票を

投じなければとじっと手を見つめる今日この頃で

ございますよ。

正義は時には国を滅ぼすことがあることは、

歴史が何度も物語っているじゃないですかね、

正義の味方は黒か白かしか判定する方法を持たないのですから

あたし等みたいな灰色好みのフーテンオヤジは段々肩身が

狭くなる一方ですよ。

「人はみんな違ってみんないい」

って呟いたのは金子みすずさんでしたかね、

アタシの大好きなフーテンの寅さんはいいことを言ってましたよ

「オレとお前は違う人間に決まってるじゃねえか、

 お前がイモ食ったからって、オレのケツから屁がでるかよ」

どうせ正義の味方には何云ったって通じないとは思いますがね。

ところでカンカン照りの真夏の陽射しの中を訪ねたのは

正義の白をまとう水無月の花、

「お前さん、そんな真っ白な色して正義をあらわしているのかい」

「正義って何なんですか、花には正義も悪もありません、

 そっと咲いてそっと散っていくだけですから」