先日、散歩の途中あまりにくたびれて、業平駅から

浅草駅までひと駅だけ東武電車に乗車しましてね、

これだけ永く浅草で生活しているのに東武浅草駅へ

降りたのは初めてだったのです。

浅草駅は終着駅であることを実感しておりましたが、

終着駅であることは始発駅でもあるわけで、

急に思い立って電車の旅がしたくなりましてね、

まあ、老人と云うのはまた子供に戻っていくような

ものですから、そのまま東武電車に乗り込んだというわけでして、

本を読みながら何処へ連れて行かれるのかはすべて

乗り込んだ電車次第の旅の始りでございますよ。

最初は子供よろしく窓の外の景色など眺めておりましたが、

大して変わり映えのしない何時もの街ばかり、

それじゃ本でも読むかと頁を開くも、あまりの心地よさに

ついうとうと、気が付けば東武動物公園前、ここで乗り換えとのこと、

次にやって来た電車に行き先も確かめずに乗り込んで、

「この電車どこまで行くのですか」

なんて尋ねるのですから、聞かれた方も目をシロクロ、

だんだん乗客が減り、到着した駅は館林、

いつもやってくる街です、それに線路はまだ先へ続いて

いるんですね、

やって来たのは太田行き、とりあえず乗り込み、

「この路線の終着駅は?」

とまたまた質問、

太田駅で30分も待たされ、いいかげんお尻が痛くなって

ようやく到着したのが 伊勢崎駅。

いやいや、えらい長旅ないなりましたよ、

何度かこの街は訪ねておりますが、電車でやって来たのは

初めてですよ。

駅を出て歩き出してびっくり、

「ナンデスカ この暑さ!!」

熊谷と聞けば最初から暑いに違いないと心構えが出来ているので

しょうが、まるで不意打ちの暑さに身体がついてまいりませんですよ。

どこか日陰はないかと、自動販売機で水を買い、ごくごくと

飲みながらやってきました、お寺の境内、

「あんた、この暑いのに歩いてると倒れるよ」

地元にどっぷり浸かった爺様が声を掛けてくれる。

「この街の一番の繁華街はどこですかね」

「そんなものありゃせんよ、昔は銘仙の産地でそりゃ賑わったがね、

今はご覧の通りさ」

「この街は群馬じゃ珍しく人口が増えてるって聞いたけど」

「増えたのは外国人ばかりだよ」

これから日本中が人口減少に見舞われる中、この街はいち早く

人口対策を率先して外国人に求めているということなのですかね。

じっとしてるだけで、汗が背中を流れる、

銀行の温度計が38度を示している、

冗談じゃないよ、老人の黒焼きなんて洒落にもりゃらしない、

やっと見つけた蕎麦屋に飛び込む、

「おやじさん此の町はどうなってるのさ、暑くて歩けやしないよ」

「あんたさん、こういう猛暑は家の中でじっとしてないと命とられるよ」

冷たい蕎麦をすすりながら、朦朧とした思考回路がプツッと音を立てて

切れたのだ、

「暑い!暑い!」

思考回路の壊れた口からは何度もこの言葉だけが堂々巡りしておりました。

「暑いぞ!伊勢崎」