日本橋より北へ向かって街道が伸びている、

その中山道の山に向かうまでの宿場では今でも多くの祭りが

行われておりましてね、

その中山道を祭りを訪ねながら旅を続けたらさぞかし楽しかろう

などと考えるのは祭り好きの旅人が考えそうなことですよ。

えーと、日本橋を出ると、板橋宿、蕨宿、浦和宿、大宮宿と

この辺りまでは東京のお隣ですから旅の気分は薄いですが

祭りを訪ねていると、いつの間にか昔の旅人になった気分が

いたしますな。

さて、次は上尾宿、桶川宿、鴻巣宿、そして間の宿の吹上宿、

やっと熊谷宿まで祭りを訪ねながらやってきましたら、

なにを焦ったか高崎宿のお祭りへ飛んでいってしまいましてね、

深谷宿、本庄宿、倉賀野宿が抜けてしまいました、なんだか

気の抜けたサイダーを飲んだ後みたいで気持ちが悪いったら

ありゃしない、

そこで探しておりました、本庄宿の秋祭りがあるというじゃないですか、

これは千歳一隅のチャンス、逃すわけにはまいりませんですよ。

寄居の宗像神社秋祭りを楽しませていただいたあと、翌日は本庄へ向かって

大宮で高崎線に乗り換えて一時間で本庄駅到着でございますよ。

昨年は寄居からそのまま秩父鉄道で熊谷へそのまま本庄へ向かったのでした、

本庄宿は中山道で一番栄えた宿場だったんですね、

駅から路地を抜け旧中山道へ出れば、そこは見事な祭り街道と化して

いるではないですか。

もしかしたら、三百年前の本庄宿の賑わいはこのようだったかもしれないと

その賑わいの中に身を委ねてから一年はあっと言う間です。

二回目の祭り訪問となると、山車の見事さの他に、お囃子、そして、

祭り人の衣装がこれまた素敵なんですね、最初の訪問では気付かなかった

ところまで目をひくものです。

町内のお揃いの祭り衣装の他に、若い娘さんたちは銘々お気に入りの柄違いの

着物に手を通し、中には母親が昔着た着物を着ている娘さんが楽しそうに

闊歩しているのです。

ここまでくるとさすがは北関東、十一月の夕暮れともなると

昼間の温かさはどこへ行ったかと思うほどに冷え込んでくるのです、

祭り衣装の上に北国のようなショウル、首巻きなどが目を惹きますね。

ずらりと並んだ露店に首を突っ込んだり、仲のいい友と語り合ったりと

まさに祭りは出会いの集大成なんですね。

仲街の御旅所でお訊ねすると、今夜は地元の氏子町内を山車が曳き回される

とのこと、それまでに腹ごしらえとばかり街道筋を歩くと、

見つけました 『電気館カレー』の看板、なんだか昔の浅草を思い出す雰囲気の

お店で昨年もこの電気館カレーを所望いたしました、なかなかおいしいカレー

でしたよ。

休憩時間が終わると、次々と山車が曳き始められ、山車の上で若い娘さん達の

お囃子が始まっておりますよ。

大太鼓1、締め太鼓3、摺り鉦1、笛2、といったお囃子で、神田囃子のような

叩き方かと聞いておりましたら、なんとゆったりとして雅なお囃子ではないですか、

このゆったりしたお囃子は、沼田や伊勢崎でも聞いたことがありましたが、

さんてこ囃子なんですかね、

お囃子の打ち手の衣装とあいまってとても優雅に聞こえてくるものですね。

それにこのお囃子は動き出した山車が止まると、全員交代してまた別の組が

お囃子を始めるのですね。

鹿沼の屋台囃子では太鼓の打ち手がいつ交代したのか判らないほど途切れる

ことなく続いていくのですが、本庄では山車が止まる度に、囃子連が全員交代

するたびにお囃子が途切れてしまうため、なかなか盛り上がるのが難しい

ですね、でもその分ゆったりとした雰囲気が醸し出されるので、

どちらがいいということにはならないようです。

山車の上にはそれぞれ人形が乗っているのですが、銀座通りにはまだ電線が

張られているので、その下に来るたびに人形が下げられるために山車が

止まらなければならないのです、どうやらその時間を利用してお囃子組の

交代を行っているのかもしれませんね。

見物する身には、山車がしばしば止まってくれるので、じっくりと

その彫刻や、人形を眺められるというわけです。

山車10台にそれぞれ人形が乗る姿は、川越より少し小さめの江戸型山車、

宮本町の日本武尊、仲町の神武天皇は共に原 舟月作らしく見事な姿です、

泉町は武内宿禰、台町の素盞鳴尊、そして上町は神功皇后と神様の揃い踏み、

七軒町の加藤清正、諏訪町の大田道灌はその武勇伝が偲ばれますな、

南本町の連獅子、本町の石橋は歌舞伎や能舞台を見るようです。

照若町の桃太郎は子供たちに大人気、

それぞれのお囃子はひっかわせのような叩き合いはありませんでしたが

ゆったりと祭りを楽しめるのもいいものです。

本庄まつりは金鑚神楽の例大祭なのですが、今回は神幸祭を見ることは

出来ませんでした、お聞きすると、神楽の奉納もあるとのこと、

まだ何度か訪ねることになりそうです。

でも午前中に本庄まで来るのは至難の業になるやも・・・