七草粥をすすり、正月気分も一段落して、

さてそろそろ旅でもするかと思ってみたが、

どうもすっきりしない気分はどうしてだろうか・・・

神社仏閣へ真面目に初詣もすましたはずなのに、

「そうか、アレだ!」

思い当たることがありました。

遊び心半分で巡っていた隅田川七福神参りを

小腹が空いたからと途中で切り上げてしまったのですよ。

旨い天丼を優先したのですから残してしまった三箇所が

気になって仕方がないのです。

もう七草も過ぎてしまいましたので、ご利益があるかどうかは

判りませんが、縁起というのはやっぱりきちんとし遂げておかないと

モヤモヤした気分が晴れませんでしょ。

隅田川七福神も恵比寿・大國・布袋・弁財天はすでに松の内に

巡ってまいりましたので残りは

百花園の福禄寿に

白鬚明神の寿老神、

そして最後は多聞寺の毘沙門天で

打ち納めでございます。

この時期の百花園はさすがに花も少なく、

どちらを向いても枯れ草色、さすがに枯れ草を見に来る人は

おりませんで、のんびりとひとめぐり、

この寒さの中、梅(初雁)が馥郁とした香りを漂わせ、

池の面にはあの神さまが降りてまいりそうな下町の塔の姿。

すでに扉にカギのかかった隙間から福禄寿様に手を合わせる。

いつもの茶店で煎茶を所望、おっとここでアブラを売ってると

また行きそびれちまいますよ、春の七草を暗記しながら、

すぐ近くの白鬚神社へ、

こちらも人影はなく、禰宜さんが人待ち顔でいたって

のんびりした気分、

チャリン!と御賽銭の音がやけに響きますよ。

旅の無事をお願いして、今年は引いたおみくじがすべて「吉」なので

調子に乗ってこちらでも、金百円をお払いして

ガチャガチャとおみくじ箱を振り、逆さにして小さな穴から出てきた

御籤棒を引っ張りだすのですが、昨日指の爪を切ったばかりで

つまみそこなって、もう一度やり直し、掴んだのは第48番、

恭しく禰宜さんが引き出しから48番のおみくじを差し出す。

掴みそこなったからもしや「凶」では・・・

恐る恐る開けば何と「中吉」、ひとつランクが

上がっておりますよ。

『このクジ運の人は常に「仕合せ」の相がある 云々』

どうやら、残り物に福があったか・・・ 

と気を良くして次なる多聞寺へ、

歩きながら、今年のおみくじはこれで打ち止めにしようと

気を引き締め、途中にステーキ屋、此処は下町では飛び切り旨い

ステーキを食べさせてくれるのですが、

またより道して毘沙門天様への参拝が抜け落ちては

おみくじの効果も消えてしまうますでしょ、

脇目もふらずに北風に向かって歩く、ところが、

ちょうど駅にして一駅分歩くのですから、

手は悴むし、小腹は空くし、とぶつぶつ罰当たりな

独り言を呟きながらやっと多聞寺へ。

こちらも人影はなし、毘沙門天様に手を合わせ、

「やれやれこれで思い残すことはない」と

腰に手を当て空を見上げれば、何と美しくも珍しい雲、

まるで海に打ち寄せる波のようじゃないですか。

こいつは春から縁がいいわい、

とひとりにこにこ七福神巡り、

早速いただいたご利益は、滅多に見られない空の雲、

やっぱりありましたよ、本物の残り物に福がね・・・。