西日ギラギラ背中をあぶれば、
大汗カキカキ浅草散歩でございます。
浅草は四万六千日で大賑わい、
季節の風物詩はいいもんですな。
「あら、散ちゃんしばらく顔見なかったけど・・・」
「ああ、夏祭りの季節到来でね、成田だ、羽生だ、って
相変わらずの祭り狂いでね」
「あんたも若くないんだからさ、そろそろ身体に見合った
生活しないと行き倒れになっちまうよ」
「へい、肝に命じておきますよ」
何しろ子供の頃から何かと世話してもらってるおばさんの
云うことはきちんと聞かないとね。
「そういえば、源さんの顔しばらく見ないけど・・・」
「ああ、あの人は大丈夫よ、夕べも千鳥足で
其処の路地フラフラ歩いてたからね」
横丁には昔から何でも知ってるおばちゃんが
いるのが浅草なんですよ、
「それではちょいと観音様にご挨拶に行ってまいります」
四万六千日分のご利益がいただけると信じておりますので
アタシは欠かさずお参りしているのですよ。
一日お参りして126年分のご利益ですよ、アタシはもう60回以上
お参りしているので、もしかしたら地獄へ落とされずに
済むかもしれないかも・・・
「キャーッ!大吉ダ!」
若い娘さんが大喜び、アタシは去年ここで大凶引いてますんで
気を引き締めたおかげで、何とか一年無事に過ごせましたんですよ、
「もしもし、お嬢さん、あまり喜びすぎちゃいけませんよ、これ以上
上がないとは、後は下がるだけだからね」
笑い声が消えた娘さん、
「変なこというオヤジさん」てな目で
アタシを睨んでプイと行っちまいました、
ああ、言い方が悪かったかな、どこぞの大臣みたいに思われたのかしらね、
反省、反省!。
「アイスキャンデー 一本¥100」
に飛びついたのは、熟年おばさんグループ、
その場で頬張ったのは、若者と同じですよ、きっと浅草の開放的な
雰囲気が、普段なら絶対にやらない食べ歩きをやってみたのでしょうかね、
いや、違うな、その手にしたのはアイスキャンデーでした、この暑さの中、
何時までも持ってたら溶けちゃうものね、やっぱりその場で
頬張るのが正解でしたよね。
活気の戻ってきた仲見世通りを抜けて、路地裏歩けば
「あら、散ちゃん、奥に源さんいるわよ」
と女将さんの一声、
暖簾掻き分け覗くと、
「けっ!まだ陽の高いうちからヘロヘロじゃないのさ」
「女将さん、これは介抱しろっていうのと同じじゃないのさ、
もうひと廻りしてきますよ」
そっと姿を消そうとしたのに、こういう時に目ざといのが源さんの
油断ならない性格でね、
「あっ、コラ、逃げるのか!」
やれやれ、どうやら散歩は中止ですよ、
「女将さん、いつものヤツね」
女将さんはしてやったりのしたり顔、
こうして浅草の夏の夕暮れは過ぎていくのでありましたとさ。
(2年前まで浅草は夢を見ていられたのです)
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