「サッコラ チョイワヤッセ!」

今年も東京ドームにあのさんさ踊りの掛け声が響き渡った。

東京の年の初めの恒例になった

「ふるさと祭り東京」が始まった。

初夢に祭りを見るくらい祭り狂いのおじさんは、

ニコニコしながら駆けつけるのでございますよ。

今年も日本各地から沢山の祭りがやってきます、

特に、間もなく六年目を迎えるあの大震災が東北各地に

甚大な被害を残しただけに、

東北からやってきた 祭りには盛大な拍手が

送られてきたのです。

東京は日本の縮図、全国から人が集まる人生の縮図

といっても過言ではないでしょう、

ふるさとを離れ、東京に居を移してしまった人々も、

心の奥に遠き故郷を抱きながら日々の暮らしに追われて

いるのです、

そんな人々に、例え一時でも故郷の香り、味を楽しみ、

祭りがその気分を高めてくれるとしたら、多くの人々が

この東京ドームに集まってくるに何の不思議もありませんよ。

今年で10回目ともなると、祭りの楽しみ方も工夫されて

くるのでして、

何しろ10日間という長帳場なので、全部見るわけにもいかず、

今回は、太鼓 を前面に押し出した祭りを選び出しました。

まず最初は、あの独特の掛け声

「サッコラ チョイワヤッセ!」

でひとりひとりが抱えた太鼓が一斉に鳴り響くと、

あの赤・黄・紫・青・桃の五色の腰帯が左右に揺れる。

「盛岡さんさ踊り」の始まりです。

何と歯切れのよい踊りでしょう、

盛岡さんさと東京は意外とかかわりがありましてね、

毎年、夏の一日上野まつりが開催されるのですが、

上野広小路を一杯に埋めたさんさ踊りが繰り広げられるのです。

上野にも沢山の さんさ踊り愛好家が生まれ、

上野は第二の さんさ踊りの発信地にもなっているんです。

その 盛岡さんさ踊り の太鼓が鳴り響く、

東京ドームはことのほか歓声や太鼓の音が響くステージでしてね、

四方八方に響き渡った太鼓の音は僅かなズレを起こして

もう一度降りかかってくるのです。

それはまるで、何十倍の人々が集い合っているように感じるのです。

そう、あの鬼が二度と戻ってこないようにとの願いを込めた

太鼓の音に相応しいではないですか。

「七夕くずし」が舞踊り

「福呼踊り」が鳴り響く、

何と明るいのでしょうか、

太鼓の叩き手も、踊り手もこんなに笑顔がこぼれる祭りは

そうはありませんよ、

 笑顔は必ず人から人へと伝わるもの、

いつも さんさ踊りに出会うたびに感じるのはそのことなんですね。

あの大震災の翌年の東京ドームにやって来た

岩手盛岡さんさ踊りの皆さんは

踊りが終わると、ミスさんさのお嬢さんが

「被災された方々を忘れないでください」

と頭を下げられた。

温かい拍手がドームに鳴り渡った、

あの日から間もなく6年、

本当にあの方達のことを忘れていないだろうか・・・

祭りの持つ意味をもう一度噛み締めた一日です。

(2018年東京ドームにて)