「祝日」というのはお祝いをする日、一般には国民の祝日を指す事が
多いのですが、市制記念日とか開校記念日も祝日でしょう、
個人の生活の中でも、誕生日や結婚記念日も祝日かもしれません、
「祭日」というのは、神社や宮中の祭りを行う日で、その日にちにそれぞれ
意味があるのです、最近は人間側の都合で、土日にしないと人が集まらない
とか、勤め優先で祭りは二の次などという理由が罷り通って、
「祭日に近い土日」などという祭りが増えてきたのは、なんだか
人間のご都合主義がむき出しみたいで哀しい気がいたします。
数ある日本の祭りのなかで、祭日を変えない
数少ない祭りのひとつであるのが
熊谷八坂神社祭礼なのでして、
毎年7月19,20,21,22,23日の五日間、熊谷の街が
祭り一色に染まる様は見事なものですね。
最初に伺った年など気温42℃にビックリより、
身体の方がついていけず
赤城山に夜まで避難したくらいでしたからね、
さてその熊谷祇園祭りに通い続けてとうとう
10年目になりました、
この大暑のなか、なぜ10年も通い続けたかは、
関東一暑い夏といわれる熊谷の祭りが、
その暑さをものともせず祭りに打ち込む
熊谷人の熱い魂が気温を吹き飛ばして盛大な祭りを
心か楽しんでいる姿に心打たれてしまったからなのです。
十年もの間、続けてこちらの祇園祭に伺ったのは、
そんな町の人たちの心意気に打たれたから
なのかもしれませんが、なにしろ大暑の三日間、それも
日本一熱いという町の祭りですから観るにしても
相当の覚悟を迫られる祭りでありますよ。
それにしてもこれだけの暑さの中で、太鼓を叩き、摺る鉦を
大火事の半鐘の如くに叩き続けるエネルギーはどこから
くるのでしょうかね。
滴り落ちる汗をふきふき昔町の山車を求めて
あっちへふらふら、こっちへよろよろ
いやいや祭りは楽しいですよ。
八坂神社のお旅所で今年も参拝できました、きっといい祭りに
出会えるに違いないと確信して、歩き回れば露店からは
焼きソバ、お好み焼きの焦げた匂いがお腹を刺激しますよ、
ところが、どこの店も人だかりで爺の寄り付く隙間もありませんですよ、
仕方なく横道、裏道歩き回ったら、
ありましたよ、○○食堂の看板、
今時珍しいくなった手動の扉を開けると、空席あり、
よろめきなが とんかつ定食を所望いたしました。
この店、爺ちゃんと婆ちゃんの二人でやってるとか、
何時もなら夕方五時には店仕舞いするのだけれど、
本日は周りの店がお祭りでお休み、仕方なく店を開いていただけたと
いうわけですよ、アタシは思わず手を合わせてしまいましたですよ。
次々に馴染み客が入ってくる、
「あれ、なんでこんな夜にやってるのさ」
「止めたくても次から次とお客さんが来て
止められないのさ、もうクタクタだよ」
婆ちゃんは思わず其処へへたりこんじまいましたよ。
いいですね、商売のためじゃなく、みんなのために働くってね・・・。
飛び切りの トンカツ食べて元気を取り戻し、再び祭りの中へ、
広場には舞台が作られ、奉納演芸大会が始まっておりました、
演歌のおじさんの晴れ姿にヤンヤの声援が飛ぶ、
歌が上手いとか、下手だとかなんて関係ないのですよ、
もう一節唸れば、拍手と歓声、
祭りってこういうことだったんですよ、
押し寄せる人波は増えることはあっても減ることなどありませんですよ、
三度目の熊谷の祭りを心から堪能いたしました。
さてと、永い夏の一日も宵の闇が覆い始めてきたようです、
高崎線の上野行き電車を待つホームにまで祭りの歓声が
聞こえています。
今から東京へ向かう客など居ないのですね、
ガランとした電車はゆっくりと熊谷駅を後に走り出す。
なんだか、随分遠くまで旅した気分に浸りながら、
いつしかコックリ、コックリ夢の中、
遠くで摺り鉦の音がまだ聞こえておりましたとさ。
(2018年7月記す)
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