(猿田彦命)

彼方此方の祭りを訪ね歩いておりますと、神幸祭や神輿渡御の先頭を

赤い顔の天狗様が辺りを祓うように歩かれる姿を見ることができます、

「わーっ!てんぐさまダ」

と子供たちに絶大な人気のあるのがこの天狗様ですが、そもそも

祭りの中に登場する天狗様とははて何者か・・・

この天狗様の正体は実は神話 天孫降臨 に登場する猿田彦命なのです。

日本神話の天孫降臨とは

天孫の邇邇藝命が天照大神の命を受けて

天児屋命、布刀玉命、天宇受売命、伊斯許理度売命、玉祖命の五伴緒を伴に

葦原の中つ国を治めるために天の八衢(やちまた)にやってくると、

辺りを照らす異形の神がいる、邇邇藝命は天宇受売命に

その神に誰なのか尋ねるよう命じるのです。

その神は国津神の猿田彦命で、天津神の御子が天降りすると聞き先導のため

迎えに来たと言うのです。

その神の鼻長は七咫、背長は七尺、目が八咫鏡のように、またホオズキの

ように照り輝いているという、

天宇受売命は猿田彦命の名を明かしたことからその名を負って

仕えることになり、

猿女君の祖神となったと神話には記されておりますが、夫婦に

なったと解釈できるのです。

常陸の鹿島神宮の神幸祭では道案内役として猿田彦命と天宇受売命が

仲むつましく手を取り合って先導する姿を見ることができます。

さて、今回の鷲宮神楽の最後の演目にこの猿田彦が登場する

「降臨御先猿田彦細女之段」が演じられるというので、楽しみに待って

おりました。

初めて目にする神楽ですので、猿田彦と神楽の祖である天宇受売命が

どのような舞をするのか・・・

猿田彦神は天狗面をつけ手に鉾と鈴を持ち、地を激しく踏みしめる

ように舞い踊ります。

天宇受売命は色白な面をつけ、赤幣、鈴、扇を手に舞い踊ります。

先ほど演じられた磐戸での少女の細女命とは異なりかなり艶かしい

風情に感じられたのは私の思い込みが強すぎたせいでしょうかね。

大きく脚を振り上げては地を踏みしめる姿の猿田彦には

これから先の道案内をする意思を表しているようです、

手にする鉾であたりを振り払う所作は、後でお聞きした

ところ、山道の雲や霧を払って道案内する様子を表現している

のだそうです。

最後に猿田彦と天宇受売命が向き合って見つめあう様子が

あるのですが、夫婦になったことを表しているのでしょうか。

この演目は

五穀豊穣、国家安穏、そして安産の祈願を込めて奉納されたと

いうことでした。

一緒に見ていたご老人の婦人と神楽について華が咲き、

尚一層楽しいひとときになりました。

今回で十二座のうち七座を見ることができましたが、まだまだ

見てみたい神楽が残っております。

機会を見つけて通い続けてみようと願っています。

祭り旅は楽しいですね。

武州鷲宮神社秋季祭にて

参考資料:古事記、日本書紀、

     久喜市立郷土資料館発行「鷲宮催馬楽神楽」