新たな年を迎えると、

「今年こそいいことがあるはずだ」

と想うのが人情でございますよ、

誰も今年は不幸になりそうだなんて想いたく

ありませんでしょ。

そんなみんなの気持ちを的確に希望に変えてくれるのが

年神さまの霊験なんでありますな。

今年も元旦の鷲宮神社の奉納神楽から始まった祭り旅、

それは今年も祭り旅を続けるという意思の確認だったようです。

松の内が終わるのを待っていたように、

各地では初市が立つのです、

関東ではその初市に売り出されるのが だるま でございますよ。

昨年も、青梅、伊勢原、伊勢崎、西新井とだるま市を訪ね歩きました

おかげで、今年も だるまが気になりましてね、

早速、前橋の初市を訪ね、だるまさんの縁起に接してまいりました。

(「五行の舞い」)

そこで出会った方から、次は小山初市が開かれると聞きましてね、

さらに、その初市では小山田間血方神社の奉納神楽が舞われると

いう聞き逃せない情報にその日を首を長くして待ちわびておりました。

最近は乗りなれた東武電車浅草駅から飛び乗ったのは南栗橋行き、

栗橋で乗り換えてJR小山駅へ、

小山の街は何度も訪ねておりましたが、列車で訪ねたのは初めてで、

ものすごく新鮮な感覚でしたね。

先日の前橋初市の賑わいが記憶に残っておりましたので、だるまを商う

店は三店ほどで、あれ、日を間違えたかと想うほどでした。

(「稲荷のくわ舞」)

神楽囃子の太鼓の音に惹かれてたどり着いたのは、観光協会物産館の

中庭に設えられた神楽舞台、すでに神楽は始まっておりました。

説明によると血方神社には十二座の神楽が伝わっているとのこと。

どうやら 天岩戸神話に題材をとった里神楽のようです。

元旦に関東の里神楽の中心である鷲宮催馬楽神楽を楽しんできた

ばかりでしたので、興味深々でありますな。

演じられていたのは稚児五人による「五行の舞い」で、

黄色い御幣を持って座っている稚児さんの周りを、赤・白・紫・緑の

御幣を持った四人の稚児さんが鈴を鳴らしながら廻り、最後は真中の

黄色の御幣に向かって祓うように鈴を鳴らす。

(「おきなの舞」)

あの鷲宮神社の演目の間に舞われる 端神楽と同様に、舞台を清める

役目があるのでしょうか、

こちらでも、演目の間に五行の舞が行われておりました。

続いて二匹の狐による「稲荷のくわ舞」、江戸里神楽の稲荷山を思わせる

演目ですが、二匹の狐が同時に舞うのはあまり見かけない演目ですね。

勿論、五穀豊穣を祈念しているのでしょう、

演目が終わると、会場に詰め掛けた人々に餅(福餅)が巻かれるのです。

(「たぢからおの舞」)

再び「五行の舞い」がもう一組の稚児五人によって舞われると、

静かに現れたのは翁姿の演者、

「おきなの舞」の始まりです。

左手に太刀、右手に鈴を持って舞うのですが、江戸里神楽の三筒男舞いの

表筒男の所作のようですね、

天磐戸を開く前の大祓いの意味があるのでしょうか、

舞い終わると、翁により餅が巻かれます。

なかなか、客を飽きさせないですね。

再び舞台の横で正座していた稚児さんによる「五行の舞い」、

特別寒い今日の日陰でじっと待っている稚児さんたちに

盛大な拍手をおくりましたよ。

どうやら最後の演目のようです。

「たぢからおの舞」が始まります。

地を踏みしめる脚裁きが独特の舞いで、時々地を蹴って舞う姿は

力強さに溢れておりますな、面の形相、衣装の素晴らしさに

手力男が荒々しい舞いに釘付けになってしまいました、

たぢからおと入れ違いに舞台に現れた やまずみの神による

やまずみの舞、たぢからおにさらに上回る荒々しい舞に

歌舞伎のとんぼを思わせるものでした。

歯切れのよい舞に、時々、笑いをくすぐる所作がいいですね、

最後は、行器(ほかい)の蓋をとって中の餅を盛大に巻いて

神楽舞が終わりました。

本来は四月の第二土日の血方神社の祭礼に奉納される神楽なのだ

そうで、明治時代から百年、一度も絶やしたことがないのだ

そうですよ。

(「やまずみの舞」)

今回は十二座のうち五座だけを観ることができましたが、

今年の四月の例祭にはもう一度訪ねてみたいですね。

まだまだ知られていない神楽が沢山ありそうですよ、

そんな神楽を訪ねる旅もまた楽しいものになりそうです。