桜が咲いたからちょいとそこまで散歩するか、

昼間の暑さも和らいだからちょいとそこまで夕暮れ散歩でも、

落ち葉がきれいだからそこまで散歩でもするかな、

凍えるような寒さでも抜けるような青空を見上げれば

気分がいいからそこまで散歩でもするか・・・

てなわけで、なんとかかんとか理由を見つけちゃ

今日も散歩でございます。

本当はね理由もなしでぶらぶら歩くのが散歩なんですが、

なにしろこの歳になっても仕事しなけりゃならない身には

なんか理由がないと行動が出来ないのですよ、

考えれば仕事人間なんてものは寂しい人生かもしれませんですよ。

仕事は仕事、遊びは遊びときっちり区別できれば言うことなしですが

そうもいかないのが人生というもの、それじゃ仕事の途中で

散歩すりゃいいじゃないかとふらふら歩き出しても誰も文句なんか

言いませんよね。

なんだかんだ得理屈並べてやってきたのはいつもの谷中銀座商店街、

細い路地の左右には、これで商売になるのかななんていう店が

10年前と同じ店構えで今もあるわけで、なにも商売だからって

大儲けしなければならないなんてことを考えなければ、

変わらぬ生活が出来るかもしれないよ、

まもなく師走、世間の方で慌しい動きが出てくるわけで、

それじゃ、正月用品でも店に並べるかとばあちゃんが並べ始めると

あら不思議、町の中がちゃんと暮れの雰囲気がでてくるから不思議ですよ、

こうゆうのを以心伝心とでもいうのじゃないですかね。

師走になれば、坊さんだって走り出すというじゃないですか、

いつもごろごろ昼寝ばかりのニャンコだって、せめて客引きの招き猫の役

くらいはやるもので、店の前で、おいでおいでの手招きについ引き込まれる

と言うわけでございます。

もうどの店に何が置いてあるかまで判るのが、散歩の効用、

本日は谷中で84年目を迎えた婆ちゃんの店に顔をつっこむと

ちょうど高菜漬けを出したところ、

「婆ちゃん、その高菜漬け貰うわ」

「今年は上手く漬かったよ、この大きいヤツにするかい」

「いや、半分に切って二つに分けておくれよ」

で、婆ちゃんが慣れた手つきで半分に切り分けてくれた高菜漬けを

計りにかけたら、大きなソロバンを出してぱちぱちと計算、

「両方で¥1,165だよ」

「婆ちゃん、消費税が上がったら計算面倒くさくなるね」

「大丈夫だよ、このソロバンが教えてくれるからさ」

そうか、コンピューターのレジだと消費税変更にお金がかかるけれど

五つ玉のソロバンはそのまま使えるというわけですよ、

どちらが進歩的なのかな・・・・

ずしりと重たい高菜漬けを片手に、いつもの路地をふらりふらり、

そうだ、ここのアップルパイ旨いのですよ、

で、ここでもひとつ所望いたしますか、

両手がふさがって、なんだかバランスよく歩けるようですよ、

路地の前でヒト休みしていると、目の前を宅急便のお兄さんが

リヤカーをつけた自転車で颯爽と走りぬけていく、

なんだか、だんだん昔の生活に戻っていくみたいですよ。

便利だと思って使っている電気仕掛けの携帯もコンピューターも

電気がなければ動かないわけで、すると一昔前のソロバンや自転車が

また役たつというわけですよ、散歩というのは真実を見つけられる

かもしれませんですよ・・・