先ほど観てきました祭頭祭では、左方・右方がそれぞれ

21年ぶり、74年ぶりに囃し奉納を無事納める様をじっくりと

感じてまいりました。

その際に、この左方・右方の各字はどのように決まるのか

判りませんでした。

21年振りだったり、74年振りだったりでどうも順番では

ないようなのです。

ご一緒した以前大親方を務められたYさんからお聞きした

話では、本殿で宮司によって卜定によって決定されるとのこと。

翌年の祭頭囃神事に奉仕する両字を神占いにて決定する祭典が

「春季祭」神事なのです。

降り続いていた雨は止むどころか益々雨脚を強くしています。

厚い雨雲にすっぽり覆われてしまった神宮境内はすっかり闇に

包まれてしまいました。

提灯の灯りが幻想的な雰囲気をもたらしています、

先ほどまでの勇ましい囃しはなく、粛々と祭事が進んでいるようです。

左方・右方それぞれの地区から奉納された大豊竹が根付きのまま

本殿左右に立てられています。

まさかこの大豊竹が後ほど凄まじい状況を作り出すとはつゆ知らず

神事の進行を見つめています。

まつりの中の神事というのは社殿の内陣において神職や氏子総代らが

執り行っている手続きで、周りに控えている者には何が行われているか

皆目わからないものなんですね。

(万灯神輿が叩き壊される)

(続いて左右の大豊竹が粉々に)

それまで静寂を保っていた境内に動きがでてまいりました、

先ほど来、担がれてきた小さな万灯神輿が本殿前に置かれておりましたが

その万灯神輿が他の地区の若衆たちによって引きずりだされると、

いきなり石畳に叩きつけるではないですが、

静から動への大変化にびっくりするやら、意味がわからず

頭の中には?が飛びかいました。

そして法螺貝が鳴り、太鼓が打ち鳴らされ、あの祭頭歌が唄われるのです。

 「イヤートホヨトホヤァー ヤレソラ

   氏子の喜びイヤーホヘ

  イヤーホエ田作り人等はトホヨトヤ

  イヤートホヨトホヤァー ヤレソラ

   御国の礎イヤーホエ

  イヤーホエ大御代豊かにトホヨトヤ

  イヤートホヨトホヤァー ヤレソラ

  五穀は豊穣だイヤーホエ」

確かに豊年満作の祈願が溢れておりますよ。

警護係りが七、八人現れると、本殿前を取り囲みます、

何事が起きるのかと固唾を呑んで見つめていると、

なんと、今度は奉納されていた大豊竹をやはり他所の

若衆たちが思い切り石畳に叩きつけるではないですか

何度も何度も繰り返し荒業が続くと、大豊竹はささらのように

割られていくのです。

どうやらこのささらは稲の穂に見立てるのですね。

ここまでの一連の動きは、まさに五穀豊穣を祈る まつり を

思わせるものでした。

さてこの間に、本殿では物申神職による卜定が行われていたようで、

いよいよその結果が知らされるのです。

拝殿の階段の上に立ち

  「来る平成29年春季祭当番、神慮を以て卜定候事、

   左方の大頭 奥野谷郷

   右方大頭   清水郷 」

境内から一斉に拍手が沸き起こります。

昨年の春季祭で決まった今年の左方奈良毛郷と右方萩原郷の役目は

終わりました。

安堵の心がさわさわと広がっていくのがわかります。

全ての神事を終え、神職、小総代の皆さんが両側に並び

左方右方の囃し人たちを労いの拍手で送るのです。

ああ、なんと麗しい光景でしょうか、

ずぶ濡れになった囃し人たちの表情に笑顔がこぼれています。

近頃の各地の祭りは決められていた祭日を人間の都合でその祭日に

近い土日に変更されてしまうことが多いのですが、

この祭頭祭・春季祭は毎年3月9日と決められているのです。

それには、神の託宣を受ける氏子達がその託宣を受ける日がその都度

変わってしまったら、託宣自体を信じられなくなるに違いなく、

その託宣を最重要神事とする春季祭の祭日が決して変更することが

ないことが大変よく理解できました。

まつり とは人が神を喜ばすために行うもので、その見返りは

穏やかな日常をいただけることにある と改めて感じていた

祭り旅の途中でございます。

(大雨の鹿島神宮 春季祭)

平成28年3月 鹿島神宮にて