流れていくのかそれとも流されていくのか

行き着く先は同じかもしれないが

そこへ行くまでの途中で、

人は悩み、苦しみ、もがきながら

同じことを繰り返していく

自分の意思を持って流れていくのだと

思いたいが、意志を持つたびに悩みが増えていく

どうしてこう次から次へと悩みが溢れてくるのか

都会のモノに囲まれた隙間のない世界に居続けると

知らず知らずに比較することに明け暮れている、

そうだよ、比較することで煩悩が生まれることに

気づきもしない・・・

途中下車した駅は十年前と何も変わっていない

相変わらず駅員もいないし、降りた客は旅人ひとり、

次に列車が来るまで二時間、まさかじっとここで待つ

ことなど出来やしない、あまりの寒さに凍えてしまう。

決まりきった笑顔もない、さあ、どうしますか、

じっとしていると身体が寒さで固まってしまいそう、

出来ることは・・・

気が付けばとぼとぼと歩き出しています、

「お婆ちゃん、こんにちは、元気ですか」

初めて会った婆ちゃんは、

一生かかって曲がってしまった腰をゆっくりと起すと

「はい、こんにちは、どちらさまでしたかね」

「初めてお目にかかる者です、寒くないですか」

「今日はぬくいね」

これでもぬくいという、

その時、数日前に降った雪がまだ解けずに残る

屋根越しに川風が吹き付けてくる、

思わず手をすり合わせると、

婆ちゃんはそんなに寒くはなかろうと目を細めて

笑った。

思わずこわばっていた顔が緩んだ気が」いたしました。

まるで細長い青空のような川

増水すれば川底に沈んでしまう木橋を、練習を終えた自転車少年が

真っ白な息を吐きながら走りぬけると、急な坂道を家族の待つ

家に向かって腰を上げてペタルを漕いでいく、

「こんにちは!」

すれ違いならその少年は確かにそう云った、

「がんばれよ!」

思わず後姿に声を掛けていた。

少年が渡っていった沈下橋の上で青空色の川を見つめている、

はるか上空から走り去るトラックの騒音だけが

通り過ぎる。

もし、この村を訪ねることがあるのなら、

お金は持ってきても役に立ちませんよ、

使うところがありませんから、

必要なのは、自由に使える十分な時間だけ、

さてと、川の音でも聴きにいきますかね。

ここは気の遠くなる刻と

川の流れが削りとっていった谷底の村、

それでも細長い空だけは希望に満ちている。