夕闇を待っていたように、灯りの点された山車が
動き出した、
夕闇は少しずつ、刻を逆さまに刻んでいく
気が付けば、そこは江戸のざわめき。
今と昔を同じ次元で語れるなんて、
祭りのほかにありますか・・・
祭にはどうやるかなんて書き物はないのです、
先人たちが一番いい方法で身体を通して伝え続けたことしか
伝わらないのです
笛の音は、あの若者に違いない、
余韻がふた周りほど豊かになっている
曾爺様が笛を吹く
そうだったのです、今だけが生きているのではない
曾爺様たちの心意気が今を動かしているのです
だから途中で止めることは、
町が死んでしまうことに繋がるのです
ほらあの太鼓が聞こえますか
鼓は、笛は、
みんな江戸時代のままなんですよ
どんなに屁理屈をつけようと、三百年続けた事実は消せないのです
闇の向こうから響いてくるのですから
今年も、小野川のほとりで静かに耳を傾けています
人の足音がパタリと消えたとき
確かに聞こえておりました
あの曾爺様たちの笑い声が・・・
2016年 佐原新宿『諏訪祭り』にて
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