今年は下谷神社例大祭は本祭りでございます。

下谷神社の宵宮は各町神輿渡御 と江戸里神楽の奉納があるのでして、

明日が本社神輿渡御、今年は盛り上がりそうですね。

ところで、本日は奉納江戸里神楽を最初から終わりまで観て見よう

というのが目的で、一番見通しのいい場所で今か今かと待ちわびる

というのもまんざらではありませんですよ。

下谷は昔から下町の代表みたいな町、大人も子供ももうすでに

祭り気分に浸っておりますよ。

さて、江戸里神楽は古事記、日本書紀に綴られた神話を題材に

能、狂言、歌舞伎の所作を取り入れた仮面劇なのですが、

セリフも照明もありません、その所作だけで心理描写や

笑いまで表現するのですからとてもおもしろいのですよ。

今回の演目は 

「天菩比之神使(あめのほひのしんし)」 若山胤雄社中

本来は

 天菩比之神使

 天之返矢

 幽顕分界

の三部作なのですが奉納神楽としてはとても永くて

演じきれないため、今回は「天菩比之神使」

だけを観ることができました。

ただし、演目も登場人物も何の説明もありませんから、

若い人など何が何だかわからないまま、途中で席を

たってしまいますよ、

何度か観ていると、その面白さが判ってくるのですが、

TVやゲームしか観ていない世代では、あらかじめ大人が

説明してあげないと無理かもしれませんね。

あらすじはアマテラスオオミノカミの使いで大国主命の館にやってきた

天之菩比命を長旅の疲れもあるでしょうからと奥で休んでもらっている間に

大国主命から相談を受けた建御名方神が従者を連れて舞台に登場します。

建御名方神は、天菩比命に

「中つ国はお返ししますからご安心ください」

と安心させお酒を飲ませて油断したところを不意打ちを食らわせるのです、

どうも神話の神様はスサノウノミコトのヤマタノオロチ退治といい、

ヤマトタケルの熊襲退治といい、酒を飲ませて油断させて退治する

というやり方が当たり前だったのでしょうね、

この天菩比命に対してもやはり酒を飲ませて油断させて退却させる

というやり方が登場するのです。

どうもこのだまし討ちみたいな仕打ちは、その後の武士道とは

相容れないような気がするのですが、神話の中ではだれも

「卑怯なり!」

なんて申しませんで、すごすごと退却する辺りが

なかなかのんびりした気風を感じるのですよ。

勧められるがまま酒を飲んでしまい、とうとう酔いつぶれて、

建御名方神に敗れてしまい大命を果たせなかった天菩比命は

いずこへかと去っていくのでした。

江戸里神楽では最後は従者(もどき)が軽妙な仕草で笑いを

さそい舞台を締めるのです。

約40分ほどに短縮された里神楽の演じられていた間中、

笛(どうやら能管のようです)と大拍子が最初から終わりまで

演者の心理描写まで表現するのですよ、長胴太鼓は演者が楽屋に

引っ込むとその人が叩くようです、

仮面、衣装、小道具等全てを揃えるのも大変なことでしょうが、

その所作や振りの軽妙さはいかにも江戸風でありますよ、

出雲大社の出雲神楽や、九州の神楽なども旅の途中で観る機会が

ありましたが、この江戸里神楽も楽しさでは引けをとりませんですよ。

最期まで眼を凝らして見つめていたためか、すっかり身体が硬く

なってしまいました、

さて、町内神輿を追いかけてみますかね。

(二年連続で下谷の祭りは中止、これはみんなが
 元気だった年の下谷大祭です)