菅原道真公というと京都や九州大宰府が浮かびますが、

意外に関東でも道真公をお祀りしているところが多いのでして、

その道真公に縁の土地を訪ねるために、関東の各地を旅したことが

ありましてね、確かに道真公は大宰府で亡くなっているのですが、

千年後の関東に数多くの伝説や縁の物語が残されているのです。

 谷保天満宮、真壁 羽鳥天神塚、大生郷 三郎天神社、

 正覚山蓮前院安楽寺

どこも道真公縁の土地ばかりでした 

私が訪ね歩いた道真公を祀る神社はそんなに名の知れたところでは

ありませんが、歩けば歩くほど夢と浪漫を感じることが出来ましてね、

勿論、東京にはもっと名の知れた天満宮があります、

湯島天満宮、亀戸天神社はその代表でもあるのです。

いつしか、湯島、亀戸は御参りすることが当たり前になりましてね、

さて今年の亀戸天神社は四年に一度の大祭が行われるのです、

御鳳輦渡御祭、氏子神輿連合渡御は日曜日に催行されるのですが、

今宵は境内に灯明が点され祭りの喧騒とは一味異なる雰囲気の中

江戸の祭り囃子の原点といわれる葛西囃子保存会の岩楯社中の

葛西囃子が流れると灯明の灯りの下に次々と人々が集まって

まいります。

(醍醐天皇)

奉納薪神楽の始まりです。

今宵の演目は東都葛西神楽保存会 岩楯美よ志社中による

  創作神楽 『天神』

 登場人物 醍醐天皇・随臣・菅原道真・夢雷神

亀戸天神社の御祭礼 菅原道真公の物語を里神楽に創作神楽として

新たに作られた神楽で、昨年に続いて二度目の観覧となりました。

天皇の許へ菅原道真公に二心ありとの訴状が届くのです、

天皇はその訴状に目を通すとさっそく菅公を呼び出すのです。

(菅原道真公)

菅公は必死に誤解を解こうとするのですが

無実を晴らすことができません。

官位を奪われた菅公は遠く大宰府の地へと左遷されて

しまうのでした。

大宰府の地に着いた菅公は天拝山の頂に立ち、

身の潔白が晴れるように祈り続けるのでした。

そのころ都では天皇の身に原因不明の病が襲い

床に着いてしまいます。

やがて天皇の夢枕に雷神が立ち現われ

「のうのう 都を騒がす禍事(まがごと)は、かの讒言により

 太宰権師 君の御前を遠ざけられし 菅公殿の吐息なり

 今より後、捧げ奉れば必ずや穏けき事さもあらん 

 その御心に違う事あれば、天下を揺るがす雷ぞ

 夢々疑う事なかれ」

と告げると梅の一枝を残して消えた。

落雷によって夢から覚めた天皇は直ちに菅公を呼び戻すのです。

そして、菅公の無実を認め官位を追贈するのでした。

事実は、菅公は遠く大宰府の地で無念の想いを抱いたまま

生涯を終わるのですが、

今回の創作神楽「天神」では、菅公を祟り神としての性格ではなく

官位の追贈を受け梅の一枝を手に

「東風吹かば 匂いおこせよ梅の花

  主人なしとて 春な忘れそ」

と謡い舞うという結末になっておりました。

菅公の最後のほほ笑みが印象的でしたね。

祭りは神輿ばかりが注目を浴びてしまいますが、神様に喜んでいただくための

お囃子、太鼓奉納、献花、献灯そして神楽などそれぞれの方法で参加されている

ことが大切なんですね。

夕暮れからの「献灯祭」、なんだか心が豊かになったようなひとときで

ございました。

(2018年夏)