「わが国は世界の先進国である」

時の総理は胸を張ってG7の議長を務めそう宣言しておりましたね、

多分、国民の大多数の人々は、わが国が先進国であることに

疑いを持たないでしょうね、

それじゃ先進国とは・・・

 「高度な工業化を達成し、

    技術水準ならびに生活水準の高い、

       経済発展が大きく進んだ国家」

のことらしいですね、

先進技術に長け、経済が豊かで、政治が安定していると 国民は幸せ 

ということなんですかね、

アタシが生きてきた戦後は、がむしゃらに金儲けに走り、その稼ぎ出した金を

あらゆる先進技術につぎ込み、確かに生活は楽になりました。

でも、本当にこころも豊かになったかと問えば、否 と答えが返ってきてしまうのは

なぜなんでしょうか。

経済と文化は相容れないのかもしれない と思えたのは

あのバブル全盛の頃でした、

「そんなことして何の価値があるの」

「儲からないことをやるなんて時間の無駄だよ」

金儲けに縁のない生き方をしようとするとまるで非国民扱いをされる始末、

確かに技術の進歩は人々の生活を劇的変えてくれましたよ、

特に医療技術の進歩は、日本人の寿命を限りなく長く伸ばして

くれたことは事実として認めないわけにはいきません、

「長生きこそ人生の幸せ」

と喧伝され、そう信じてきたのは果たして本当でしょうか、

豊かになった人々は、自分達の生活を楽しむために生き生きとして

きたはずでした。

ところがあまりに楽しい日々の生活に周りを見つめることを

しなくなっていたんですね。

アタシ等の若いころは4,5の人兄弟は当たり前でしたでしょ、

生きていくだけで精一杯でしたが、余計なことを考えることも

しないでいられたのです、今思い出すと楽しいことが沢山あった

気がしているのです。

しかし、生活が豊かになってくると誰に強制されるわけでもなく、

少子化の道を選んでいたんです、

老人になっていく世代は、長生きこそが人生の最大の目的と

病気になれば病院へ、それも一箇所だけでは安心できず

二箇所、三箇所と尋ね歩くのです、やがてそのツケは医療費高騰を

招くのです、

自分達が支えてきた先輩達はすでに無く、自分達が支えられる世代に

なってみたら、その下の支えてもらえる世代は激減していたのです。

世界に冠たる福祉国家、長生きすればするほど医療費、年金が国を

滅ぼす結果になっていることに愕然とするばかりなんです。

花を見つめていたら

「原点回帰」という言葉がふいに湧き上がってきたんです、

今から三百年前の時代、多分寿命は50年くらいだったでしょう、

そんな時代でも、例えば花をもっと美しく、もっときらびやかに

するための品種改良が瞬く間に全国に広がったのです、

花菖蒲などはその典型かもしれませんね。

それは何もこの国だけのことではなく、

世界中でバラ、チューリップ、ボタン・・・

と次々に新しい花々が作られていたのですから、改良は人間の

本来持っている本性なのかもしれませんがね、

(今も生き続けている古種の花菖蒲、可憐に感じます)

やがて人間の欲望は、花から動物へ、さらに人間の寿命を延ばすことへ

と進化(果たしてこれが進化と呼べるのかは)し続けていくのですね。

死なない人間がこの世に溢れかえった時、何が起こるのか、

動物の本能は、増えすぎれば自己解決の道を進むはず、

しかし人間だけ寿命が120年、150年に延びていけば、個人の寿命の前に、

国が滅びてしまうでしょう。

「働かざる者 食うべからず」

昔聞いたフレーズが蘇ります。

さて、その「原点回帰」、いったい何処へ戻ればいいのでしょうか、

「長井原種」という小ぶりな花菖蒲を見つめながら、この国の未来を思う

花の旅の途中でございます。