現代の旅というと、乗り物(飛行機、鉄道、自動車)によって

移動するのが当たり前ですが、ほんの150年前までは、旅といえば

テクテク歩いていくのが当たり前だったんです。

それでも昔の旅人は健脚揃い、一日40キロくらいは平気で歩いて

いたんですからたいしたものですよ。

アタシも人に負けぬ旅好きですが、何処へ行くにも自動車を運転して

出かけていたので、脚が退化してしまったんではないかと不安になる

ほどでしてね、体力は脚から衰えると知って、近頃はなるべく歩いて

行くように旅の仕方を変えてみたのですよ。

いろいろ試してみますとね、一日 7~8キロが限度で、これでは行きたい

処へは後何十年経っても行き着けないじゃないですか、そこで一番楽な

鉄道プラス徒歩旅を実行、特に祭りを訪ねるにはこれが一番なんですよ。

おかげで、今年も随分あちこちの祭りを訪ねることができましてね、

なにしろ祭りというのは人が大勢集まるところ、そんなところへ自動車で

行ってごらんなさい、駐車場はない、通行禁止で走れない、それに人一人が

移動するのにあんなに効率の悪いモノはありませんですよ。

で、鉄道で移動、後はテクテク歩く というのは実に旅を楽しくするものだと

気がついた(遅すぎる!)というわけですよ。

九月になると彼方此方で秋祭り、気楽にひょいと電車に乗って随分祭りを

楽しみましたね。

なにしろ一日で三箇所なんて強行軍を続けておりますので、HP「旅の途中」に

載せる時間がありません、だって、パソコンの前に座っているより、祭りの中に

身を置いているほうが何十倍も楽しいのですからね、それに、近頃は記憶の容量が

減少しているようで、思い出せないことが多くてね、思い出したら、「旅の途中」へ

載せますのであまり期待しないでおいてくださいね。

とここまでが前振り(相変わらずくどいですな)

ちょいと耳にしたのが、祭り好きの友人のひとこと、

「江戸時代に戻っちまったみたいだったよ」

「そんな場所があるのかい」

「なにしろ、歩いている人の中に、江戸の旅姿が混じってるんだ」

「そんなら浅草だって見ることができるよ」

「まあ、騙されたと思って行ってみなよ、百聞は一見にしかず ってな」

場所は浅草から電車一本で行かれる品川ですよ、

そうか、品川は東海道の宿場町でしたね、江戸日本橋を出発した旅人が泊まるには

近すぎるじゃないですか、そうです、品川宿は今で言う澁谷や新宿、池袋みたいな

人が集まる繁華街だったんですな、

人が集まるには旅籠、木賃宿、茶屋、商店等が建ち並び当然のように

岡場所(色町、遊廓、飯盛旅籠)もできるわけで、旅に出る者を送りにいくとか

旅から戻る者を迎えに行く なんて理由を付けちゃ集まってくるのは

昔も今も変わりはないですな。

北品川駅を降りると、どこから集まったのか人・人・人

細長い旧東海道品川宿に人の群れ、いくら江戸時代に賑わったからといって

こんなには人は集まっちゃいませんですよ、

お聞きすると「品川宿場まつり」で今年で25回目なんだとか、

いやいや知りませんでした、この宿場道は何度も歩いていたのですがね、

「これから花魁道中が始まるんだよ」

爺さんが興奮して教えてくれましてね、

花魁といえば浅草吉原が本場と思っておりましたが、品川も昔から色町が

あったんでしたっけね。

待つこと三十分、禿(かむろ)を引き連れて花魁が三枚歯の黒塗下駄で八文字

に歩く姿はなかなか優雅なものですな。

まあ、花魁といえば大名が城を傾けるほどにお金が掛かった存在、傾城なんて

呼ばれていたんですな、本日は京成(傾城)電車で花魁道中を楽しませて

いただきました、これで終わりかと思ったら、明日もやるんだというじゃ

ないですかね、江戸風俗行列 というんだそうですよ、

明日は府中大国魂神社へ行く予定なんですが、行きがけの駄賃に寄って行きますか・・・

というわけで、本日も傾城電車でやってまいりました東海道品川宿、

昨日に勝る人の波、どうやら風俗行列は終わってしまったようで、

まあ、出店も多いしあちこち首を突っ込んでいると、

その人込みの中にどうみても江戸の昔姿の人がまぎれているのですよ、

虚無僧姿あり、風鈴売りあり、若い夫婦にちょっかいを出す芸者あり、

おっ、木枯らし紋次郎まで登場、若侍にお姫様、新撰組に鉄火場の姉御あり、

町娘から大店の御上さん、現代に蘇った昔町ここにありですな。

近頃日本で流行るもの、ハロウィンの仮装がまもなく青山・原宿あたりで

うごめき始めますが、同じ仮装ならアタシは断然こちらの江戸姿に

惹き付けられましたね。

見ているより、演じている人の方が輝いていたことが、時代を超えて

人の心に日本人を感じさせていたのかも知れませんですよ。

祭りには神幸祭のように平安時代を思わせる衣装で練り歩くことが

今でも行われておりますが、もっと自由に変装願望が叶えられる

こういう まつりがあってもいいですよね。

さてと、府中へまいりますか・・・

(たしか2015年9月の記憶です)