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目の端にちらりと過ぎったその白さに

思わず車を止めたのは急ぐ旅では無かったから

かもしれない。

道端の空き地に止めさせてもらうと、その白い花の

元へ歩き始めた。

通り過ぎた路地を曲がるとその奥から漂う香りが・・・

「山百合だったのか」

と花を見る前に香りが教えてくれた。

傾斜地の林の足元に見事な山百合の花が揺れていた。

古人は花の重さに耐えられずに揺れている姿を見て

揺り(ゆり)と呼んだのかもしれない。

香りとその姿の美しさにしばし佇んでいると、

カサコソと葉摺れの音、

身構えるとひょっこりと婆さまが顔を出した。

「この山百合は婆ちゃんが植えたんですか」

と声を掛けると

「いや、自然に生えてきたんだよ、

 去年は ポツッ、ポツッっと疎らに咲いてたんだけど

 今年はこんなに咲いたよ」

下草を刈っていたところだと言って腰を伸ばしながら

答えてくれた。

「花はね、毎年ひとつづつ増えていくみたいだね

 花が咲くようになって6、7年位かね」

「それにしても見事なものだね」

「この百合が咲くとな、そろそろお盆の支度を考え始めるんだよ」

「そうか、花が教えてくれるんだね」

「家の前に向日葵やミソハギが咲いていたけど、あれは

 婆ちゃんの作品だね」

「あはは、作品なんて言うほどのモノじゃないよ、

農作業の合間に植えるだけだよ、」

「この田圃も婆ちゃんの仕事かい」

山百合の林の前に広がる田圃は見事なほど緑に溢れている。

「米はな子供を生み出すのと同じだ、手間をかければ

 いい子が生まれるのさ」

「この田圃はきっといい子が生まれるね、こんなに美しい田圃は

 滅多にお目にかかれないもの」

婆ちゃんは嬉しそうに微笑んでくれた。

毎年通い詰めている城下町の祭りへの道筋にこんなに美しい場所が

あることを知って、楽しみがまたひとつ増えました。

「来年も、この時期になったら寄らせてもらうね」

「そうか、祭りの時期だったんだね、此処から何処へも

出かけたことがないから他の土地のことはなんも判らないが

一度見てみたいもんだな」

「婆ちゃんの丹精している花も祭りに負けちゃいないくらい見事だよ」

「来年も山百合が咲いてたらお寄りなさいよ」

そんな会話がこの旅を思い出深いものに変えてくれそうな

旅の途中です。