待乳山本龍院と云うのが正式な寺院の名でありますが、

浅草じゃ誰もそんな堅苦しい呼び方はいたしませんでね、

待乳山の聖天さんてぇのがアタシ等の呼び方でございまして、

浅草寺よりこちらの聖天さんの方が古いてぇのが自慢なんで

ございます、

江戸の昔は絶好の眺望を誇り、参道には掛茶屋が

軒を並べて客を誘うほど賑わったのでありますが、

今は浅草でも静寂を楽しむ信心深い人たちの憩いの場でありますよ。

ところが、こちらの境内は浅草界隈でも屈指の黄葉の名所でして、

12月(しわす)の声を聞くと、ハラハラと舞い散る黄葉が

それはそれは綺麗なものでございますよ。

まだかまだかと気になって小高い待乳山を見上げに通うのが

此の時期の日課なんでございますよ。

昨夜の寒風もどうやら収まったところで、やってきました

  待乳山聖天さん、

境内から見上げれば、どうです見事なもんじゃありませんか

これはこれで秋の風情でございますよ。

おりから畳屋の大将が本堂の畳替えの真っ最中、

何だか早々と師走の気分でありますよ。

ところで待乳山といえば浮世絵にも残されている

大川(墨田川)の絶好の展望台なのでありますが、

今はあの平成のスカイツリーの展望台に早代わり、

大川の向こうにすっくと立ち上がったスカイツリーが

見事な姿で迫ってくるようですよ。

ぼーっとあのツリーを眺めていたら急に心配事が・・・

銀座も、六本木も。青山も汐溜も、

みんなクリスマスの飾り付けで盛り上がっていても、

頑なにそのクリスマスをやらないのが浅草という町、

だって、異人さんのお祭りがこれほど似合わない町はないでしょ、

ところがあのスカイツリーが完成すると、

名前がツリーですからね

必ずクリスマスシーズンになったら、

ライトアップを始めるに違いありませんよ、

その一番の眺めのいい場所が浅草ですよ、

あれほど頑なにクリスマスを拒否してきたのに、

さーてどうなることやら、

だって、簡単にサンバの裸踊りに負けちゃった町ですからね、

「クリスマスはこんなに人が集まるのか」なんてことが

判ったら、もう羽子板そっちのけで、東京で一番の

クリスマスデコレーションなんて吹きまくるのではないですかね、

なにしろお調子者の集まった町ですからね、

さーて、相変わらず江戸趣味を貫くか、クリスマスの軍門に下るか

粋と伊達姿で生き抜く覚悟やいかに・・・、