「・・・よろづ生きとし生けるもの、

山河草木、吹く風、立つ浪の音までも、

念佛ならずといふことなし・・・」

寺院に依存しない一所不住の諸国遊行を続けた旅人でもある

『一遍上人』にゆかりの寺院でもる藤沢の遊行寺を訪ねました。

一遍の生き様を知れば知るほど本人に時宗開宗の意思が

あったとは思えないが、七百余年の後のことなど想像さえ

出来なかっただろう一遍の像を見つめながら

「南無阿弥陀仏」を唱えてみる。

"御滅灯(一ツ火)" の儀式も無事終わられた境内は

新しい年を迎える前の静寂が漂っております。

『藤澤山無量光院 清浄光寺』が正式の寺院名、

今は湘南の中心になっている藤沢市は、この遊行寺の

門前町として発展したため、山号の藤澤山から町の名に

なった由縁を持つ、

毎年正月の箱根駅伝で名を全国に知られた遊行寺坂を

あえぎながら通過する駅伝選手とともに忘れられない

存在になっているのです。

広い境内に一歩足を踏み入れると、樹齢700年とも伝えられる

大銀杏が眼をひきます、

鎌倉八幡宮の大銀杏が大風で倒壊したことはつい最近の

一大事でしたが、ここ遊行寺の大銀杏もかつては樹高30mを

越える巨木でしたが、昭和57年の台風で幹が折れずんぐりとした

姿にはなりましたが、今も樹勢は衰えず今では信仰の対象に

なんですね

永い歴史の中では、地震、火事等の災害に何度も再建された

ことはこの寺が、時宗の総本山としての存在意義を持ち続けていた

証なのでしょう、

総門を潜ると、本の知識だけで知っていた放生池の前に立つ、

元禄時代、「生類憐れみの令」により、江戸市中の金魚、銀魚が

この放生池に放たれたといいます。

現在は、貼り紙あり、

「むやみに魚を捨てないでください」と。

本堂は自由に参拝くださいとある、阿弥陀如来の前で

神妙に六字念仏を唱えてみれば、なにやらこころが

洗われた気分がいたしますよ。

ほとんど毎日を遊行三昧の日々であれば、こうして

正座して静寂の中に身を置くこともまた旅の中の修養のひとつ

になる気がいたします。

妙に真面目な気分で境内を見回せば、遅れてきた晩秋の彩が

心地よい気分であります。

もう紅葉も終わりだとばかり思っておりましたが、まだ、これからが

盛りを迎える旅先を思い出しました。

それでは、あの暖かな国を目指して遊行の旅を続けますかね。